[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2023年4月号 342号

(2023/02/16)

第216回 リース業界 ~俊敏性・柔軟性を強みに環境変化に適応、進化を続けるリース会社

久保 英次(S&Pグローバル・レーティング・ジャパン 金融法人および公的部門格付部 主席アナリスト)
  • A,B,EXコース
※本記事は、M&A専門誌マール 2023年4月号 通巻342号(2023/3/15発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。

はじめに~提携・M&Aの歴史とその背景

 リース会社は人口動態等の構造変化、会計・税制変更等の外生的ショック、脱炭素など新たなトレンド加速等の環境変化に俊敏かつ柔軟に適応してきた。その過程で伝統的なリース業務を深化させるとともに、国内外で非伝統的リース業務を拡大させた。また、非リース業務も積極的に参入し、事業を拡大した。

 こうしてリース会社の業務内容は大きな変貌を遂げてきた。本稿では国内大手リース会社5社(図表1)を軸にして過去約20年間の業界再編や提携・M&Aの歴史とその背景を振り返り、今後の企業・事業戦略および財務戦略の方向性について考察する。

【図表1】 国内大手リース会社5社とその主要株主
 ORIX三菱HCキャピタル三井住友ファイナンス&リース東京センチュリー芙蓉総合リース
主要株主特になし三菱UFJフィナンシャルグループ 20.05%
三菱商事 18.39%
三井住友フィナンシャルグループ 50%
住友商事 50%
伊藤忠商事 30.04%
中央日本土地建物(旧第一勧業銀行系) 14.04%
日本電信電話 10.07%
みずほ銀行(旧第一勧業銀行) 3.84%
ヒューリック(旧富士銀行系) 14%
明治安田生命 8.9%
損害保険ジャパン 3.3%
みずほ銀行(旧富士銀行) 3%

(出所) 各社公表資料

銀行再編に端を発した国内大手リースの再編

 1990年代後半から2000年代前半にかけての金融危機や日本版金融ビッグバンを契機に、大手都市銀行同士の合併が進展し(詳細は「第214回 銀行業界(3メガバンクグループ) 国内市場は成熟、海外銀行やデジタル分野のM&Aが増加傾向に」参照)、その動きに呼応してグループ傘下の子会社の再編も進んだ。2000年代以降は銀行再編に合わせた国内大手リース会社の経営統合・合併の歴史であった。

 2000年前後において、大手都市銀行の再編により3メガバンクが誕生した。こうした再編の動きは、傘下のリース子会社にもおよび、複数の大型再編が実現した。代表的な例としては、2003年の三井住友銀リースとさくらリースの合併、それに続く2007年の住商リースとの合併。2007年のUFJセントラルリースとダイアモンドリースの合併、2009年の東京リースとセンチュリー・リーシング・システムの合併が挙げられる(図表2)。こうした大手同士の再編により、合併を実現した大手リース会社は銀行が有する顧客基盤や総合商社の有する国際的なネットワーク・事業基盤の活用を通じて国内外における経営基盤を強化した。

【図表2】 国内大手リース会社5社の再編・M&A・出資事例
 ORIX三菱HCキャピタル三井住友ファイナンス&リース東京センチュリー芙蓉総合リース
2000 日立リース株式会社と日立クレジット株式会社合併、日立キャピタル株式会社に商号変更   
2001    安信リース株式会社と合併
2002    安田リース株式会社と合併。芙蓉総合開発株式会社のリース金融事業部門を分割承継
2003 三菱電機クレジットと合弁事業発足住商リース株式会社がエヌイーシーリース株式会社(現 NECキャピタルソリューション株式会社)の株式を追加取得(現 持分法適用関連会社)  
  三井住友銀リース株式会社がさくらリース株式会社と合併  
2007 UFJセントラルリース株式会社とダイアモンドリース株式会社が合併、三菱UFJリース株式会社に商号変更住商リース株式会社と三井住友銀リース株式会社が合併し(存続会社 住商リース株式会社)、三井住友ファイナンス&リース株式会社に商号変更  
2008    シャープファイナンス株式会社の株式を取得し子会社化
2009   東京リース株式会社とセンチュリー・リーシング・システムが合併、東京センチュリーリース株式会社に商号変更 
2010  SFIリーシング株式会社(SFIリーシング株式会社は、株式会社ソニーファイナンスインターナショナルのリース・レンタル事業部門を会社分割により承継した会社)の株式を取得し、子会社化株式会社IHIファイナンスサポートの株式を取得し、子会社化 
2012  RBS Aviation Capital (現SMBC Aviation Capital)を、株式会社三井住友銀行並びに住友商事株式会社と共同で買収、子会社化京セラ株式会社と京セラTCLソーラー合同会社を設立 
2013 JSA International Holdings, L.P.の株式を取得し、連結子会社化 ニッポンレンタカーサービス株式会社の株式を追加取得、子会社化

日本カーソリューションズ株式会社(前身は旧センチュリー・オート・リース株式会社とエヌ・ティ・ティ・オートリース株式会社)と東京オートリース株式会社が合併、日本カーソリューションズ株式会社を子会社化
 
 日本ビジネスリース(三菱HCビジネスリース(株))の株式を取得し、子会社化   
2014ハートフォード生命株式会社の株式を取得、子会社化(2015年に同じく子会社のオリックス生命と合併)Engine Lease Finance Corporationの株式を取得し、子会社化  ALM2010Limitedの全株式を取得、Aircraft Leasing and Management Limitedを子会社化
 Beacon Intermodal Leasing, LLCの株式を取得し、子会社化   
2015関西エアポート株式会社の株式を取得し、持分法適用関連会社化 DMG MORI Finance GmbHの株式を追加取得(現子会社) 株式会社ワイ・エフ・リーシング(連結子会社、横川電気株式会社と共同出資にて2002年設立)を吸収合併
2016Robeco Group NV(現ORIX Corporation Europe N.V.)の株式を追加取得、完全子会社化三菱UFJリースと日立キャピタルが資本業務提携日本GE合同会社の全持分を取得
日本GE合同会社がSMFLキャピタル株式会社に組織変更及び商号変更
CSI Leasing Inc.の株式を追加取得、子会社化 
2017Ormat Technologies, Inc.株式約22.1%を取得(2023年1月時点では約19.7%)子会社 Engine Lease Finance Corporationと米国で航空機エンジンのパーツアウト事業を行う INAV Group,LLCとの間で、航空機エンジンのパーツアウト事業を行う合弁会社設立に関する契約を締結  アクリーティブ株式会社の株式をTOBで取得、子会社化
2018Avolon Holdings limitedの株式を取得し、持分法適用関連会社化ENGS Holdings Inc.の株式を取得、子会社化三井住友フィナンシャルグループと住友商事は、三井住友ファイナンス&リース に対する出資比率をそれぞれ 50%に変更。これにより、三井住友フィナンシャルグループの連結子会社から持分法適用関連会社化神鋼不動産株式会社(現TC神鋼不動産株式会社)の株式を取得、子会社化株式会社ジーアイ・ホールディングスの株式を取得、子会社化。これに伴い株式会社インボイスを子会社化
    株式会社FUJITAの株式を追加取得、連結子会社化
2019株式会社大京をTOBにより子会社化 SMFLキャピタル株式会社が三井住友ファイナンス&リース株式会社と合併(存続会社 三井住友ファイナンス&リース株式会社)株式会社アマダリースの株式を取得、子会社化株式会社LNホールディングスの株式を取得、子会社化。これに伴いNOCアウトソーシング&コンサルティング株式会社を子会社化
  住友三井オートサービス株式会社の株式を取得(現 持分法適用関連会社)伊藤忠建機株式会社の株式を取得、持分法適用関連会社化メリービズ株式会社の株式を取得、持分法適用関
連会社化
  Sumisho Aero Engine Lease B.V.(現 SMBC Aero Engine Lease B.V.)の株式を取得(子会社)Aviation Capital Group LLCの株式を追加取得、子会社化 
2020  SMFL LCI Helicopters Limitedの株式を取得(子会社)NTTと資本業務提携契約を締結。NTT・TCリース株式会社の株式を50%取得、持分法適用関連会社化ヤマトリース株式会社の株式を取得、子会社化
   Advantage Partners(H.K.) Limitedの 


■筆者プロフィール■

久保氏久保 英次(くぼ・えいじ)
慶應義塾大学経済学部卒。CFA協会認定証券アナリスト、ニューハンプシャー州公認会計士。商業銀行、信託銀行、証券会社、金融会社、政府系金融機関、保険会社の信用力分析を担当。金融機関ESGおよび金融会社のGlobal Industry Focus Team (GIFT)のメンバー、グローバル保険ハイブリッド諮問委員会の共同議長も務める。2016年入社。入社以前はムーディーズ・ジャパンで、保険会社の主任アナリストとして信用分析業務に従事。それ以前は主にPwCあらた有限責任監査法人にて投資銀行・証券会社、不良債権投資特別目的会社、保険会社の監査証明業務に携わった。

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