[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2022年9月号 335号

(2022/08/03)

みちのりHDが佐渡汽船に出資、地方の海運会社再建への新たな挑戦

―― バス、モノレールに加え海運会社も支援対象に

  • A,B,EXコース
※本記事は、M&A専門誌マール 2022年9月号 通巻335号(2022/8/15発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。
松本氏

松本 順(まつもと・じゅん)

みちのりホールディングス代表取締役グループCEO、経営共創基盤取締役共同経営者、日本共創プラットフォーム 取締役専務。
1961年11月11日生まれ、60歳。仙台市出身。上智大学法学部卒業後、日本リース、GM系投資会社などを経て、2003年産業再生機構執行役員に就任。九州産業交通、関東自動車、アビバジャパンなどの事業再生案件を統括。機構解散後、2007年に経営共創基盤(IGPI)の設立に参画し、交通・観光事業の経営改革や再生を行うプロジェクトに関与。2009年IGPI傘下に設立したみちのりホールディングス代表取締役に就任。現在は、岩手県北自動車・浄土ヶ浜パークホテルの代表取締役社長、福島交通・茨城交通・関東自動車・会津乗合自動車・湘南モノレール・佐渡汽船の取締役会長を兼務するほか、公益社団法人福島県バス協会会長、復興庁復興推進委員会委員を務める。

15億円の優先株を引き受け

 長年にわたり経営再建に取り組んでいた新潟県の海運会社の佐渡汽船(旧ジャスダック上場)は2022年3月末、みちのりホールディングス(みちのりHD)を引受先とする第三者割当増資を実施し、みちのりグループに入った(注)。

 佐渡汽船は、1913年(大正2年)に創業して以来、長年にわたり佐渡島と本州を船で結ぶ交通・物流機関として事業を継続してきた。しかし、近年は人口減少や観光客減少の影響を受け、徐々に輸送量が減少すると共に経営は悪化。新潟県や地元の地方公共団体、メインバンクの第四北越銀行を中心とする金融機関からの経営支援を受けて経営改善に取り組んできたものの、業績の好転は難しかった。公募増資や株主割当増資により株式引受人の募集も模索されたが実現には至らず、コロナ禍の2020年12月期には、売上高の著しい減少によって当期純損失25億円を計上、8.7億円の債務超過に陥った。

 2021年4月以降は支援先の選定を急ぎ、ファイナンシャル・アドバイザーのフロンティア・マネジメントを通じて、再生型案件に実績を有するファンドや事業会社を中心とした14社に佐渡汽船へのスポンサー支援の打診がなされたが、支援先選定は難航した。その後、地方バス会社やモノレール会社の経営再建で実績を積み上げているみちのりHDによる経営支援が決定した。

 新体制では、みちのりHDが3月に株式の約3分の2を保有し最大株主になった。第四北越銀行も第三者割当による株式の引き受け(15億円)で支援し、みちのりHD、新潟県・佐渡市、地元金融機関・佐渡農業協同組合の5者が支援する体制で、経営再建に向けて取り組んでいく。みちのりHDが海運会社の運営に関与するのは初めてだ。代表の松本順氏に、佐渡汽船の支援・再建を今後どのようにして進めていくのか、考え方や取り組み方針を聞いた。
佐渡汽船 ジェットフォイルすいせい
佐渡汽船 ジェットフォイルすいせい

佐渡汽船の支援に至るまでの経緯

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