[【小説】経営統合の葛藤と成功戦略]
2013年12月号 230号
(2013/11/15)
山岡ファイナンスサービス社は、渋沢ファイナンスコーポレーション社との経営統合を数カ月後に迎えようとする中で、大規模な構造改革の実施に着手していた。経営統合と構造改革の両立という難しい難題を突き付けられる中で、山岡FS社では具体的なリスク分析と対策検討に着手していた。
人事異動発表による、希望退職応募への影響
経営統合を3カ月後に控えた年明け早々に、山岡FS社では予定通り大規模な人事異動が実施された。そして取締役クラスと管理職を中心とした数十人に及ぶ異動は、社内的にも対顧客的にも小さくはない混乱を生じさせていた。しかしそれらの混乱は、経営企画室長の松尾明夫が率いる統合推進事務局内では事前に予測された範囲内であり、初期的な混乱の最小化と収拾に向けた取り組みが既に発動されていた。
一方で初期的混乱を乗り越えた後の、経営統合までの数カ月間に起こり得るより大きな混乱については、統合推進事務局でもその可能性をはかりかねていた。混乱の事前予測を困難にしていたのは、管理職及び現場従業員の希望退職への応募見込みである。今回は人事異動の発表から実際の年明けの異動まで、約1カ月半の期間が置かれた。そして希望退職の応募締め切りはこの1カ月半の間に設定されていたため、異動の発表内容が希望退職の応募に大きく影響することは必至であったのだ。
周到な根回しが奏功したこともあり、今回の異動で栄転的に登用される者は誰一人として希望退職に応募しなかった。また経営統合に対してあからさまに反対の言動を示し、今回の異動で閑職に回されることになっていた管理職の過半は、希望退職に応募する結果となった。ここまでは全て予想の範囲内である。
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――4月1日「オリックス・クレジット」から「ドコモ・ファイナンス」に社名変更
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