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[対談・座談会]

2020年4月号 306号

(2020/03/16)

[座談会]「公正なM&Aの在り方に関する指針」下における実務上の課題

【出席者(敬称略)】
Ken Lebrun(デービス・ポーク・アンド・ウォードウェル外国法事務弁護士事務所 パートナー)
今関 源規(三菱UFJモルガン・スタンレー証券 投資銀行本部 M&Aアドバイザリー・グループ マネージングディレクター)
西村 修一(長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士)
濱口 耕輔(長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士)(司会)
左から濱口 耕輔氏、Ken Lebrun氏、今関 源規氏、西村 修一氏

左から濱口 耕輔氏、Ken Lebrun氏、今関 源規氏、西村 修一氏

<目次>
  1. はじめに
    「公正なM&Aの在り方に関する指針」の概要と意義
    自己紹介
  2. 特別委員会
    特別委員会設置のタイミング、リーガルアドバイザー(LA)選任のタイミング
    米国の実務上、委員の独立性をどのように判断するか
    特別委員会が独自のアドバイザーを選定することの要否と選任した場合の、会社のアドバイザリーとの棲み分け
    特別委員会の報酬の決め方
  3. アドバイザーの独立性
    対象会社、特別委員会のFAまたはそのグループ会社が買収者に買収資金を供与している場合の対応
    買収者のレンダー(融資を行う金融機関)のLAが対象会社または特別委員会のLAとなることの可否
  4. 株式価値算定書とフェアネスオピニオン(FO)
    株式価値算定書の実務への影響
    フェアネスオピニオン(FO)を取得する意義
    フェアネスオピニオン(FO)の法的効果
  5. マーケットチェック
    MBOの局面でマーケットチェックを行う場合の方法
    案件公表後に対象会社が対抗提案を受けた場合の対応
  6. マジョリティ・オブ・マイノリティ(MOM)条件
    支配会社による買収の局面でMOMを設定することの評価
  7. 情報開示
    開示実務の変化
  8. 米国と日本における実務の違い
  9. おわりに
1. はじめに

「公正なM&Aの在り方に関する指針」の概要と意義

濱口 「昨年6月28日に『公正なM&Aの在り方に関する指針』(M&A指針)が経済産業省から公表されました。M&A指針は、MBOおよび支配株主による買収を中心に、主に手続面から公正なM&Aの在り方を提示するものです。特に、最近はコーポレートガバナンスの文脈において上場子会社のガバナンスの在り方が活発に議論されており、それを受けて今後、支配株主による上場子会社の買収案件が増加していくことが予想されます。そのような状況に鑑みると、M&A指針の果たす役割は、日本のM&A実務においてますます大きくなっていくと考えています。もっとも、M&A指針は、法的拘束力を有する法規範ではなく、いわゆる『ソフトロー』に分類されるもので、そこでも明確に述べられている通り、指針はベストプラクティスの形成を目的として策定されたものですから、指針で取り上げられている公正性担保措置を忠実に全て実行することが求められているわけではありません。ただ、日本人は生真面目ですから、このようなルールが出されると、しっかりと遵守するという意識が働きがちです。やや文脈は異なりますが、日本において、同じくソフトローに分類されるコーポレートガバナンス・コードのコンプライ(遵守)の割合が異常に高いことはその表れといえます。指針の公表から半年以上が経過し、その後、公表されたMBOや支配株主による買収も複数存在しますが、実務感覚に照らし、M&A指針に過剰に反応しすぎているのではないかと思わなくもない事例も散見されます。そこで、このタイミングで、M&Aに携わることの多い財務と法務の専門家に集まっていただき、それぞれの立場からM&A指針の実務上の課題や実務に与える影響に加え、実務上の落としどころ、勘所や今後の展望について議論していきたいと思います」

自己紹介

濱口 「まず、自己紹介をお願いします」

Lebrun 「デービス・ポーク・アンド・ウォードウェル外国法事務弁護士事務所パートナーのLebrun(レブラン)です。東京在住で、20年以上ニューヨークと東京で日本企業や他国の企業を代理して、買収案件、投資案件に携わってきました。よろしくお願いします」

今関 「三菱UFJモルガン・スタンレー証券の今関と申します。投資銀行本部のM&Aアドバイザリー部で約18年間、前職を含めると約20年間M&A関係の仕事をしています。指針に関しては、指針を策定した『公正なM&Aの在り方に関する研究会』の委員ではありませんが、オブザーバーとして出席し、どういう議論があってこういう内容になったのかある程度把握しておりますので、今日は何かそういったことも含めてお話しできればと思います」

西村 「長島・大野・常松法律事務所の西村と申します。弁護士になって15年目で、その間M&Aに携わっています。指針との関係では、今関さんと同様、当事務所の玉井裕子弁護士が委員になっていた関係で、オブザーバーとして参加していまして、『公正なM&Aの在り方に関する研究会』における議論の内容は把握しています。これまでのM&A実務の中で、今回の指針の対象になっている親会社による子会社の完全子会社化、あるいは、MBO案件にも複数関与してきていますが、今日の座談会にあたり指針の公表後に出た事例の開示内容も確認してきていますので、それらの事例を見て感じたことなどもお話しできればと思っています」

濱口 「長島・大野・常松法律事務所の濱口です。弁護士になって14年目で、M&Aを中心にやってきています。主にストラテジックな買収やアライアンスに携わることが多く、M&A指針との関係でいうと、MBOよりはむしろ支配株主による買収に携わることが多いかもしれません。私も研究会にオブザーバーとして参加していましたので、その議論の内容や背景は十分理解しているつもりです。それを踏まえ、指針で触れられている主要な公正性担保措置に関し、実務上問題になるであろう論点について皆さんからコメントをいただくような形で議論を進めていきたいと思います」


2. 特別委員会

特別委員会設置のタイミング、リーガルアドバイザー(LA)選任のタイミング

濱口 「まず一つ目は特別委員会です。特別委員会は、MBOや支配株主による買収の際、対象会社によって設置される、社外取締役など独立性を有する者で構成される会議体です。特別委員会はM&Aの是非や取引条件の妥当、手続きの公正性について検討・判断することが期待されていて、今回の指針の中でもおそらくこの特別委員会は最も重要性が高く、公正性を担保する上で必須の措置と捉えられていると思います。逆にいうと、今後、特別委員会が設置されないMBOや支配株主による買収はないだろうと考えていますが、いくつか実務上検討しなければならない悩ましい部分もあると感じています。

 一つは、特別委員会設置のタイミングの問題です。

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