[M&A戦略と法務]

2024年5月号 355号

(2024/04/09)

米国式SPAにおける取引条項の傾向

-ABAディールポイントスタディを題材として-

中野 祐嗣(TMI総合法律事務所 パートナー 弁護士)
  • A,B,C,EXコース
第1 はじめに

 アメリカ法曹協会(ABA)のBusiness Law Sectionが、会員向けに、「2023 Private Target Mergers & Acquisitions Deal Points Study」(以下「2023年版スタディ」という)を2023年12月22日付で公表した(注1)。この資料は、ABAが、2022年及び2023年第1四半期における米国の非上場会社を対象会社とする100件以上のM&Aの株式譲渡契約(SPA)(注2)を分析し、取引条項の傾向をまとめたもので、概ね2年ごとに公表されている資料の最新版となる。日本においても、SPAの相場感の把握や、米国の傾向で日本の実務に反映できるものがないかの参考とするため、多くのM&A実務関係者に参照されている。なお、ABAは、米国上場企業を対象とする「2024 US Public Target Deal Points Study」も2024年3月15日付で公表している。

 2023年版スタディは、134頁に及ぶ情報量が多い資料である上、米国実務を前提とするため必ずしも一読了解とはいかない。そこで本稿では、日本の実務の観点から興味深いと思われた傾向をピックアップし、解説することとしたい。

第2 米国式SPAにおける取引条項の傾向

1 アーンアウト条項の増加

 アーンアウト条項とは、


■筆者プロフィール■

中野氏

中野 祐嗣(なかの・ゆうじ)
TMI総合法律事務所パートナー弁護士。クロスボーダーM&Aを専門とし、国内及び海外のクライアントを代理して、上場企業案件からスタートアップ案件まで幅広く従事している。2009年弁護士登録。2017年コロンビア大学ロースクール修了(LL.M.)。

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