[マールレポート ~企業ケーススタディ~]
2013年7月号 225号
(2013/06/15)
塩野義製薬グループからMBO
三菱ケミカルホールディングス(HD)は2013年3月、米大手投資ファンドのカーライル・グループ(以下カーライル)が保有するクオリカプスの全株式を取得し、子会社化した。買収額は負債を含め558億円。
クオリカプスは医薬品及び健康食品向け動物性ハードゼラチンカプセル及び植物性カプセル(HPMC)の製造販売、さらにカプセル充填機、シール機及び製剤関連機器の製造販売を行っている。同社は1965年に塩野義製薬と米イーライ・リリーの合弁会社として設立され、92年に塩野義製薬の完全子会社となった。しかし、日本市場では業界首位の地位にあったものの、海外市場では大手医薬品メーカーなどの顧客獲得に苦戦する状態で、塩野義製薬としては医療用医薬品への経営資源集中を進めるなかで、カプセル事業はノンコアビジネスとして位置づけるようになった。そのため、カーライル・グループの支援を得て05年10月にMBOを行い、同年12月1日には、シオノギクオリカプスからクオリカプスへと社名変更し、新たなスタートを切った。日本をはじめ、米国、欧州にも事業拠点を持ち、12年の連結売上高は約200億円、海外売上高比率は6割を超える。
カーライルは、グローバルに展開するオルタナティブ(代替)投資会社で、114のファンドおよび76のファンド・オブ・ファンズを運営し、その運用額は総額1760億ドルにのぼる(13年3月31日現在)。
「三菱ケミカルHDは、『“協奏により、さらなる成長・創造と飛躍を実現する”企業グループ』を目指して、11年度から15年度の5年間を実行期間とする中期経営計画『APTSIS 15』を策定しました。『APTSIS 15』では、『無限の可能性と広がりを持つ“Good Chemistry”を基盤として“KAITEKI”を実現するカンパニーでありたい』との新たなビジョンの下、Sustainability[Green](環境・資源)、Health(健康)、Comfort(快適)を企業活動の判断基準としながら、高機能・高付加価値事業への事業ポートフォリオ転換をさらに推進し、持続的企業価値をより一層向上させていくことを目標にしています。
ヘルスケア部門については創薬の田辺三菱製薬をグループに持っていますが、医療材料分野での事業を一つの大きな柱として伸ばしていこうと考えておりました。当社の推定では、世界のカプセル市場の規模は約1000億円で、年率数%の安定的な成長が見込まれます。そのうち医薬品用が半分以上を占めており、クオリカプスは医薬品用カプセル市場において20%を超える世界シェアを有しています。また、今後年率10%以上の成長が予想される植物性カプセル(HPMC)市場において、クオリカプスは技術・品質の優位性によってリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。そこで、医療材料分野の強化のためクオリカプスの買収に踏み切りました。三菱ケミカルHDとして同事業分野での企業買収は、クオリカプスが第1号になります。
特にゼラチンベースではないセルロースベースのカプセルは、世界でクオリカプスが特許を所有して製造している製品です。このセルロースについては、グループ会社である三菱レイヨンと材料面でシナジーもございますし、クオリカプスのカプセル製造において使われる技術は三菱樹脂、あるいはその他グループ企業が持っている樹脂成形技術とのシナジーもあります。また、当然のことですが当グループの田辺三菱製薬は、このカプセルの将来的な顧客という意味でもシナジーがあります。そこで、買収後、三菱ケミカルHDが50%、残りを関連グループ事業会社4社がそれぞれ株主に入るという形にして、それぞれの事業の中でシナジーが生み出せる体制にしました」
こう語るのは、クオリカプス代表取締役会長の露木滋氏(三菱ケミカルHD取締役)。
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