[【小説】経営統合の葛藤と成功戦略]
2013年11月号 229号
(2013/10/15)
山岡ファイナンスサービス社は、渋沢ファイナンスコーポレーション社との経営統合を半年後に迎えようとする中で、大規模な構造改革を実行せざるを得ない状況となっていた。経営統合の様々な駆け引きが繰り広げられる中で、山岡FS社の野澤博人社長は先々代の社長である牛島満に相談し、会社への最後の奉公となる決死の覚悟を決めていた。
そしてついに構造改革の実施が発表された山岡FS社では、その日の夜を静かに迎えようとしていた。
構造改革発表の夜
山岡FS社から発表された構造改革プランは、当日の夜のニュースでも取り上げられた。つい先日まで、渋沢FC社との華やかな経営統合関連の話題が取り上げられた後だっただけに、マスメディアの食いつき方は通常の構造改革以上のものがあった。報道番組内では、経済評論家や証券アナリストが様々な憶測に満ちた解説を行っている。
山岡FS社の経営企画室長であり、渋沢FC社との統合推進事務局長を務める松尾明夫は、本社IR室に置かれていたテレビ画面を一人深夜まで見つめていた。
本社内には殆ど人影はなかった。普段の金曜であれば、飲みに行こうと誘いあう声が聞こえ、多くの社員が銀座や日比谷界隈に向かっていくのが常であったが、この日は多くの社員が足早に帰宅した。普段は仕事に没頭し、取引先の接待などで深夜帰宅も休日出勤も当たり前のこととしてやってきた中堅社員の多くが、その日は無意識的に早く家に帰りたいと感じていたのだ。
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