[視点]

2015年2月特大号 244号

(2015/01/15)

コーポレート・ガバナンスとM&A ~日本経済成長への二つのカギ~

 ケン レブラン (シャーマン アンド スターリング外国法事務弁護士事務所 パートナー)
  • A,B,EXコース

  筆者は過去約20年間にわたり、金融、食品、エネルギー、通信、医療、化粧品、小売、製造業等、数多くの業界において、大小の日本企業によるクロスボーダーM&A案件に携わってまいりました。依頼者である日本企業の経営戦略上の目標達成を支援し、事案を成功裏に導くことが、弁護士を含めた各種M&Aアドバイザーの最も重要な役割の一つです。それと同時に、M&Aを通して日本の経済成長や社会的発展を促すという重要な役割の一端を担うこともまた、M&Aアドバイザーとしての重要な使命の一つです。

日本経済の成長にはM&Aが必要不可欠

  少子高齢化に伴う国内市場規模の停滞する中、日本経済の拡大を図るためには、日本企業がその資産および労働力の生産性を高めること以外に道はありません。M&Aは、企業が保有する資産および労働力の配置転換を行う上で主たる役割を担うものと考えます。しかしながら、国内M&A案件およびインバウンドM&A案件においては、案件総数および総取引金額いずれも伸び悩んでおり、国内M&A市場の活性化には程遠いのが現状です。他のOECD加盟国に比べても、日本のM&A市場規模は非常に低水準な状況にあります。例えば、2013年現在、日本のGDPに占める対内直接投資残高の割合は3.5%と、OECD加盟国の中で最も低く、また日本の対内直接投資に占めるM&A案件の割合は約30%と、同割合が約50%である欧米諸国に比べ極めて低い水準となっています(注1)。

  近年、TOB規制が一部見直される等、金融商品取引法、会社法および東証上場規則の改正が進められ、法律・規則上は、国内におけるM&A案件を(これらの改正前に比べ)格段に遂行し易くなりました。会社法や東証上場規則の改正が進められているにも関わらず、依然として国内M&A市場が伸び悩んでいる原因としては、欧米諸国と大きく異なる日本固有のコーポレート・ガバナンス制度や企業風土等が挙げられます。これらの要因により、日本企業はこれまでM&A案件(特に海外案件)における買い手としては非常に積極的であったものの、自らの一部または事業全体の売却に関しては消極的な姿勢をとり続けてきました。企業風土については容易に変革を遂げることは事実上困難である一方で、コーポレート・ガバナンス制度については、時勢やグローバル・スタンダードに沿った形で変革していくことが望ましく、推奨されるべきです。

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