[M&A戦略と法務]

2015年9月号 251号

(2015/08/17)

インドネシアにおける合弁契約作成の留意点

 水戸 重之(TMI総合法律事務所 弁護士)
 三澤 充(TMI総合法律事務所 弁護士)
 梅田 宏康(TMI総合法律事務所 弁護士)
  • A,B,EXコース

1. はじめに(合弁契約作成の必要性)

  本稿を寄稿する2015年7月現在、インドネシア共和国(以下単に「インドネシア」という)は製造業を中心に市場の冷え込みが目立っている。自動車・オートバイは各社とも2015年上半期は前年比20%から25%の販売台数減との報道もされており、昨年末の石油燃料への政府による補助金撤廃が大きな影を落としている。その一方で、約2.5億人の人口を擁するインドネシアを重要な消費市場として捉え、非製造業については、飲食、ホテル、人材紹介、ノンバンキング等の事業分野を中心に外国資本の投資が続いている。非製造業は、製造業と異なり、次項で説明するいわゆるネガティブリスト(投資分野において閉鎖されている事業分野及び条件付きで開放されている事業分野リストに関する大統領規程 2014 年第 39 号の別紙が一般的に「ネガティブリスト」と呼称されるため、以下でもこの呼称を使用する)において依然として広範な外資規制の対象とされており、外国資本のみによる法人設立は認められていない場合が多い。この場合、外資規制を充足させるため、外国資本はインドネシアの内国資本との間で合弁会社(ジョイントベンチャー)を設立することが求められることとなる。

  合弁会社の設立に際しては、パートナーとなる内国資本との間で合弁会社の経営方針、それぞれの議決権配分、利益分配の方法、意見対立の解決方法等について規定した合弁契約を事前に締結しておくことが望ましい。

  加えて、インドネシア会社法(2007年法律第40号、以下単に「会社法」と記載する場合にはインドネシア会社法をいう)は、第7条第2項及び第5項において、インドネシア法人の株主は特殊な事態を除いて2名以上必要とする旨規定し、いわゆる一人会社を認めていないことから、外資規制がなく、外国資本100%でインドネシア法人を設立できる場合でも、外国資本間での権利関係等を規律する合弁契約を締結しておく必要性が高い(注1)。

  そこで、本稿では、インドネシアにおける合弁契約の作成時に留意すべき事項について解説を加える。

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