[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2024年2月号 352号

(2023/12/18)

横浜銀行のM&A業務、「能動的営業」に転換し成果

――2022年度の受託件数は87件まで急伸

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※本記事は、M&A専門誌マール 2024年2月号 通巻352号(2024/1/18発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。

2019年度から取組みを強化

 横浜銀行は2001年、横浜銀行の関連会社である横浜キャピタルにおいてM&A業務を開始した。2007年になり、横浜銀行本体でM&A業務をスタート。当時は相談が寄せられた場合に対応するという受動的なスタンスだったが、2010年代半ば以降になり、顧客の事業承継ニーズの高まりや成長戦略の一環として取り組みを強化するようになった。

 また、2016年には銀行持株会社コンコルディア・フィナンシャルグループを設立し、以降はM&A関連業務においてコンコルディアFG傘下の東日本銀行との協業を開始した。

 2019年度には横浜銀行に「ソリューション営業部」を新設。顧客のニーズが多様化するなか、従来の金融サービスだけでは対応できない課題が増えたことを受け、銀行としての課題解決力の高度化、強化を図ることにした。これらの取り組み強化の結果、2022年度は受託件数、成約件数で過去最高の実績を記録した。

 「2019年度~2021年度の前中計期間中、営業現場にM&Aの意識を植えつけるために、営業店の支店長には支店長自らが企業オーナーと経営の根幹部分についてしっかり対話するという「トップセールス活動」の中で、オーナーとM&Aの話をする活動も推し進めてきた。その意識は順調に営業現場に根付いてきており、2022年度~2024年度現中計においては変革を加速し、成果を具現化する3年間としている。

 M&Aに対する意識は支店長から課長、そして担当にまで浸透し、その結果ソーシングルートも拡大している。また、地方銀行各行や、M&A仲介会社及び、PEファンドとの連携も進んでおり、M&Aファイナンスの領域においてもLBOローンのノウハウが行内にだいぶ溜まってきている。こうしたなか、ソーシングルートはまだまだ広がる余地が残っている。あくまでもお客様の課題解決が起点であり、ベースにはこれまで培ってきたお客様とのリレーションがある。実際に案件も増えているので、まだ伸ばすことができるという感触を得ている」(横浜銀行ソリューション営業部部長・隅達也氏)と手ごたえを示す。

 昨今では、事業承継以外のM&Aのニーズも高まり、40~60代の企業経営者がM&Aを企業の成長戦略の選択肢のひとつとして当然のように考えるようになってきている。「そこにもしっかりと対応していきたい。」(同)とのこと。

 神奈川県内だけではなく、都内にも豊富な顧客基盤を持つのが横浜銀行の大きな特徴であり、今後も顧客基盤を最大限活かしていく方針だ。

企業情報グループがM&A業務を担当

 M&Aの所管部署は、同行の営業本部のなかのソリューション営業部内にある企業情報グループだ(図表1)。企業情報グループは、統括管理役職者1人、M&A実務担当者11人、企画業務担当者2人の合計14人で構成される。経験4年程度のメンバーが中心だが、M&A仲介会社の中途採用者や、10年以上の業務経験を持つ行員も在籍している。

 他行で一般的なエリア制を約2年前に廃止し、機能別のチーム制を敷いているのが特色だ。M&A実務担当者の11人は3つのチームに分かれる。内訳は、受託した譲渡案件のソーシングとエグゼキューションを担当する「アドバイザリーチーム」が6人、行内の優良顧客に対して、譲渡ニーズの確認や買収ニーズの確認をする「提案型営業チーム」が2人、他の金融機関やPEファンド、M&A仲介会社と連携する「外部連携チーム」が3人だ。

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