[対談・座談会]
2016年5月号 259号
(2016/04/15)
<はじめに>
―― 日本のコーポレートガバナンス改革はこの1、2年で大きく進展しました。2015年が元年と言われ、今年はその2年目に当たります。ガバナンス改革(企業統治改革)の狙いは、日本企業の稼ぐ力の回復、日本経済の再生にありましたが、一連の改革により企業買収やM&A全般を取り巻く環境も変わっています。
一方、M&Aに目を転じると、2015年は世界的にM&Aがブームとなりました。製薬業界やビール業界で巨大企業が誕生しています。日本も海外M&A(IN-OUT)が過去最高となり、トータルの金額も過去2番目の額になりました。日本も一見、活況を呈しているように見えますが、欧米と比較すると質量ともまだ低調です。敵対的TOBに代表される提案型TOBがもっと活発になれば、日本のM&Aはさらなる飛躍を見せるのではないでしょうか。
折しも、2016年は王子製紙(現王子ホールディングス)が北越製紙(現北越紀州製紙)に対し敵対的TOBを試みたものの、失敗に終わってからちょうど10年目になります。
今だったら、王子のような敵対的TOBは成立するのか。ガバナンス改革により、日本の企業買収はどのような影響を受けるのか。さらに提案型TOBを促進するため、日本の買収法制などを見直す必要があるのか。
本日は、第1部で企業買収の観点からガバナンス改革の経緯、狙い、到達点を整理するとともに、今後のガバナンス改革の方向性についてもお話をしていただきます。続いて第2部で日本のM&Aの現状、敵対的TOBの意義、王子・北越事件とその後、提案型TOBの可能性、買収法制について日本が進むべき道などについてご議論をしていただきます。
田中亘東京大学教授は会社法と企業買収法制についての第一人者です。ニコラス・ベネシュ公益社団法人役員育成機構代表理事は、日本のコーポレートガバナンス・コード策定の影の功労者と言われています。川村尚永課長は日本の産業組織の改善などの担当課長で、金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」のメンバーなども務めておられます。
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