[M&A戦略と会計・税務・財務]

2016年11月号 265号

(2016/10/18)

第113回 PMI雑話:「blue printing」と「サービスの劇場アプローチ」

 山内 利夫(PwCアドバイザリー合同会社 ストラテジスト)
  • A,B,EXコース

1.はじめに:製造業のサービス業化とM&A

  最近、IRプレゼンテーションで「製造業のサービス業化」「モノづくりからコトづくりへ」というフレーズを耳にするようになった。メーカー、特に輸送用機器や電機・機械・精密機器のようなハードウェアメーカーは、モノの価格競争から脱却し、高付加価値化を図るべく、顧客との「共創(Co-creation)」を謳いながらサービスを意識したビジネスモデルに変革し、サービス収入を増加させようとしている。米国のマーケティング学者Vargo & Lusch両氏が提唱した「サービス・ドミナント・ロジック(Service Dominant Logic)」の発露である。

  近年では、ドイツ発のIndustry4.0、米国発のIndustrial Internet of Thingsに触発され、自動運転やビッグデータ・アナリティクスといったトレンドを重視し、情報・ソフトウェア技術を「サービス業化」のドライバーとしようとしている企業も少なくない。

  かねてより、日本の製造業においては企画・マーケティング・販売や研究開発における競争力が、とりわけ新興国において課題であるとの指摘があったが(注1)、上記の産業的文脈の中で、製造業は研究開発能力や販売網に加え、製品に関わるソフトウェアや製品提供に付帯するサービスに対する関心を高めている。レコフM&Aデータベースによれば、輸送用機器・電機・機械・精密機器企業による、ソフト・情報およびサービス企業に対するM&Aは2013年~2015年の3カ年で97件あり、うち41件は対外案件である(図表1)。

図表1 輸送用機器・電機・機械・精密機器企業によるソフト・情報・サービス企業M&A

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