[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2019年7月号 297号

(2019/06/17)

第171回 物流業界~トラック運送会社の最新M&A動向、変わる経営環境と増加する事業承継型M&A

桜井 博一(M&Aキャピタルパートナーズ 企業情報第二部 M&Aアドバイザー)
  • A,B,EXコース
 トラック運送会社のM&Aが活況である。レコフデータの集計によると、2018年の物流会社が関わったM&Aの年間件数は、公表されている件数だけで72件と前年の56件に比べ、28.5%増加した。(図表1)。その要因は「後継者が不在」という事業承継の問題だけに留まる話ではない。近年では後継者候補の親族が社内にいても、M&Aを選択するオーナーが増えているのが実情だ。

 本記事では増加する物流業界に属するトラック運送会社の最新M&A動向についての考察を述べる。

(図表1)公表された物流会社のM&Aの件数


「物流業」という業種に属する「トラック運送会社」とは

 「物流業」と一言でいってもその業態・業容は様々である。トラックでの陸上輸送、航空機での航空輸送、フェリーでの海上輸送といった輸送機関の違いによるものから、倉庫や物流センターでの保管、荷役、流通加工、3PLといった業務も含まれ、中には、実際にトラック等の輸送手段を持たない利用運送をメインとする事業者も存在する。

 その中でも「物流業」と聞いて最もイメージしやすく、事業者数も多いのがトラックでの陸上輸送業者であり、いわゆる「トラック運送会社」や「運送会社」と呼ばれる事業者ではないだろうか(図表2)

 本記事では、物流業の中でも特に、トラックでの陸上輸送を行う会社を「トラック運送会社」と定義し、同業界に絞った考察を述べていることにご留意頂きたい。


「事業承継」という観点でみたトラック運送会社の動向

 図表3はトラック運送事業者数の推移である。1990年の道路貨物自動車運送事業法施行以来、新規参入事業者数は急増し、2007年度のピーク時には6.3万社を超えたものの、2012年度からは連続で減少している。減少理由は様々な要因が想定されるが、近年は廃業数が新規事業登録者数を毎年上回っているということが推察できる。

 また、筆者が独自に集計したトラック運送会社における代表取締役の年齢構成割合によると、

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