[マールレポート ~企業ケーススタディ~]

2022年1月号 327号

(2021/12/09)

【小正嘉之助蒸溜所】鹿児島の老舗焼酎メーカーが英国ディアジオと組んで世界市場を目指す

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小正 芳嗣(こまさ・よしつぐ) 小正嘉之助蒸溜所 代表取締役社長

(写真提供:小正嘉之助蒸溜所。以下同)

小正 芳嗣(こまさ・よしつぐ) 小正嘉之助蒸溜所 代表取締役社長

1978年5月鹿児島生まれ。2001年東京農業大学 農学部 醸造学科卒業。03年東京農業大学大学院 醸造学専攻卒業。03年小正醸造株式会社入社。05年小正醸造株式会社 取締役経営戦略本部長、08年常務取締役 経営戦略本部長兼生産本部長、12年専務取締役 経営戦略本部長兼生産本部長、18年8月代表取締役社長。21年8月小正嘉之助蒸溜所株式会社 代表取締役社長、小正醸造株式会社 取締役相談役。


英国ディアジオが出資

 鹿児島の老舗焼酎メーカーである小正醸造が2021年8月、新設分割によってウイスキー製造事業を新会社「小正嘉之助蒸溜所」へ承継、同時に新会社に対してウイスキーの「ジョニーウォーカー」やウオッカの「スミノフ」など多くの有名ブランドを持つ英国ディアジオが出資し注目されている。

 小正醸造の創業は1883年(明治16年)。1953年7月に法人化され、1957年には焼酎業界で初めて米焼酎を全量オーク樽で熟成させる「メローコヅル」を発売。オーク樽貯蔵焼酎のパイオニアとして知られる蔵元である。小正嘉之助蒸溜所設立に伴って、小正醸造の4代目社長であった小正芳嗣氏が小正嘉之助蒸溜所社長に就任、芳嗣氏の弟である小正倫久氏が小正醸造の5代目社長となった。

 嘉之助蒸溜所では2017年からウイスキーの製造を開始しており、蒸留所初のシングルモルトウイスキーである「嘉之助 2021 First Edition」を2021年6月に、「嘉之助 2021 Second Edition」を11月にそれぞれ限定販売した。

 一方のディアジオは、ギネス社とグランドメトロポリタン(英語版)社の合併により、1997年に誕生したイギリスの酒造企業。1998年にギネス日本駐在事務所として日本にディアジオの100%子会社が設立され、2002年に事務所名をディアジオジャパンに変更している。

 ディアジオによる小正嘉之助蒸溜所への出資は、英国のDistill Ventures(ディスティル・ベンチャーズ)を通じて行われた。同社は、2013年に世界初のスピリッツ業界のアクセラレーターとして設立されたベンチャーキャピタル(VC)で、技術的ノウハウ、生産サポート、マーケティングの専門知識など、さまざまな形で投資先企業に支援を提供するというのが特徴だ。

 新型コロナ禍にあって、焼酎メーカーはいずれも厳しい経営を余儀なくされている。こうした中で、ディアジオとのパートナーシップをテコに焼酎で培った発酵や蒸留の技術でグローバルなウイスキー事業に挑戦しようというのが小正嘉之助蒸溜所である。

 VCを通じてウイスキーのグローバル企業であるディアジオと手を結んだ小正嘉之助蒸溜所の小正芳嗣 代表取締役社長に成長戦略を聞いた。

<インタビュー>
長年培ってきた樽貯蔵焼酎の技術をウイスキー造りに活かす

 小正 芳嗣(小正嘉之助蒸溜所 代表取締役社長)

創業138年の老舗焼酎メーカー

―― 小正醸造は、蒸留酒である焼酎の製造技術を生かして2017年8月にウイスキーの製造を始め、2021年8月にはウイスキー製造の子会社として小正嘉之助蒸溜所を立ち上げました。この小正嘉之助蒸溜所には世界的なウイスキーメーカーであるディアジオが、VCのDistill Venturesを通じてマイノリティ出資しています。まず、小正醸造の歴史、特徴などについてお聞かせください。

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