コロナ禍で日本企業の業績回復が減速するとの予測も出ている中、「事業再生ADR(Alternative Dispute Resolution)」の活用が注目されている。最近では、国内製造業で最大級の経営破綻となった自動車部品メーカーマレリホールディングス(以下、マレリ)が当初、事業再生ADRの活用を目指したものの、頓挫したことが話題となった。大手投資ファンドである米KKR傘下にあるマレリは22年3月に事業再生実務家協会に事業再生ADRを申請したが、手続きが円滑に進まず、現在は同傘下において民事再生手続きでの経営再建を進めている。
再生型M&Aとしての事業再生ADR
事業再生はM&Aと密接な関わりがある。マレリはKKRの出資先であり、ファンド傘下での事業再構築において、日産自動車系の部品メーカーである旧カルソニックカンセイと、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(現ステランティス)の自動車部品部門であるマニエッティ・マレリが経営統合した会社であり、その際に拡大した負債が事業再生に至った背景との指摘がある。また、現在マレリは事業の見直しを加速しており、ノンコア事業や子会社の売却を検討している模様だ。このような意味でも、事業再生の過程はM&Aそのものと言っても良い。
本稿では特に、事業再生ADRを採り上げたい。事業再生ADRは、その約4分の1が頓挫しているとの報道もある(「再生ADR、4分の1頓挫」日本経済新聞、2022月8月1付け)。以下では、事業再生ADRの事例を研究し、事業再生型M&Aについて考えてみたい。
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