[寄稿]

2023年4月号 342号

(2023/03/09)

レスポンシブル・ビジネス実現に向けたM&A 成功の要諦

【第4回】ビジネスデューデリジェンス時のポイント

太田 貴大(アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ M&Aプラクティス プリンシパル・ディレクター)
林 嘉禾(同 シニアマネジャー)
田浦 英明(同 マネージャー)
韓 翌雯(同 コンサルタント)
  • A,B,EXコース
前回の振り返り

 前回は、レスポンシブル・ビジネスの加速に向けたM&AのPreフェーズにおける、候補企業探索時の3つのポイントをご紹介した。買収対象となる候補企業が自発的に自社との連携を求めてくるための仕掛け作り、候補企業からの信頼感の醸成、定期モニタリングによる早期参画の実現という3点が、Preフェーズでの成否を分けることを述べた。そして今回は、Executionフェーズにおいて、ディールの成否と交渉価格を大きく左右するビジネスデューデリジェンスでの2つのポイントをご紹介する。

従来M&Aとの違い

 従来M&Aのビジネスデューデリジェンスでは、過年度の財務実績や市場成長の見込み、顧客の購買意思決定要因、業界のKSF(Key Success Factor:成功要因)、対象企業の強み等から将来のキャッシュフロー・収益性といった財務価値を予測するのが一般的な価値算定方法である。このような従来型のビジネスデューデリジェンスでは、サステナビリティの観点での評価は、ネガティブチェックを通したリスクマネジメントに留まり、企業の社会的責任に対する世間の見る目が厳しくなる中で、ESGチェックリストやサステナビリティデューデリジェンスは、事業リスクを正確に把握し、起こりうる損失を極小化するために行うプロセスとして組み込まれる。ネガティブチェックの対象としては、気候変動への対応、従業員の多様性の確保、持続可能なサプライチェーンへの取り組みなど、サステナビリティ関連の要素が自社の基準を満たすのかという観点となる。このように、サステナビリティ観点での評価が、企業もしくは事業価値算定そのものの要素として検討スコープに含まれることはほとんどない。

 一方、レスポンシブル・ビジネスM&Aのビジネスデューデリジェンスでは、その企業が持つサステナビリティ価値そのものが買収の目的・対象となるため、リスク対応の観点だけでなく、企業価値算定そのものの検討スコープに直接的に取り入れる必要がある。特に、「サステナビリティ価値の商品価格への反映(値上げ)余地の検証」と「自社のサステナビリティ目標に対する貢献度合い」という2点の見極めがビジネスデューデリジェンスにおける最も重要な論点となる。

ポイント(1):商品価格への反映余地の検証

 第1のポイントは、


■筆者プロフィール■

太田 貴大(おおた・たかひろ)太田 貴大(おおた・たかひろ)
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ M&Aプラクティス プリンシパル・ディレクター
アクセンチュア新卒入社後、外資系消費財メーカーを経てアクセンチュアに再入社。国内外の様々な業界のクライアントに対しPreからPost M&Aまで幅広く支援。Japan M&A Conference 2019等の外部向け講演も実施。

林嘉禾(はやし・よしかず)林 嘉禾(はやし・よしかず)
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ M&Aプラクティス シニアマネジャー
東京大学大学院博士号取得後、外資系コンサルティングファームを経てアクセンチュアに入社。M&A・アライアンスを活用した新規事業立ち上げやデューデリジェンスなどM&A関連のプロジェクトを中心に従事。

田浦 英明(たうら・ひであき)田浦 英明(たうら・ひであき)
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ M&Aプラクティス マネージャー
約8年間、一貫してコンサルティング業務に従事し、新規事業立上やPMIなどを経験。これまで支援した主な業界は自動車、保険、製造、商社、小売り。

韓 翌雯(はん・いうぇん)韓 翌雯(はん・いうぇん)
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ M&Aプラクティス コンサルタント
独ミュンヘン大学大学院卒業後来日、スタートアップ等を経てアクセンチュアに入社。クロスボーダーM&Aや新規事業立上げ等プロジェクトに携わる。これまで支援した主な業界は金融、通信、製造、ベンチャー。

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