Question
株式価値を計算するには、
DCF法や
類似会社比較法(
EBITDA倍率法、EBIT倍率法など)によって事業価値を計算した後、非事業用資産を加算し、有利子負債等を控除する必要がある。この事業価値から株式価値を計算する過程をネットデット調整というが、どのような項目を
ネットデットとして調整するべきなのだろうか。また、事業価値の計算方法にかかわらず、ネットデット調整の方法は同じでいいのだろうか。
1 ネットデット調整とは
そもそも事業価値から株式価値を計算するのに、なぜ調整を要するのか。大別すると以下の2つの理由が挙げられる。
- 評価対象企業が事業用(=フリー・キャッシュ・フローの組成に寄与する)以外の資産を有している場合には、事業価値とは別途加味する必要がある
- 事業・企業価値はすべての資金提供者に帰属する。株主に帰属する価値のみを見るには、他の資金提供者に帰属する価値を控除する必要がある
加味する資産と控除する負債の差が「ネット」となるが、一般的には負債の調整額のほうが大きくなることから「ネットデット調整」と表現される。
実務的によく見るネットデット調整項目としては以下のような項目がある。
■筆者プロフィール
鷺坂 知幸(さぎさか・ともゆき)
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 パートナー、バリュエーション&モデリング統括、公認会計士。
有限責任監査法人トーマツ入社後、米国会計基準を含む大手金融機関の監査業務に従事。その後デロイト トーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に転籍し、無形資産価値評価、米国基準、国際会計基準ののれんの減損テスト支援、株式価値および事業価値評価等のバリュエーションサービスに関する業務に従事、現在に至る。
■監修者プロフィール
中道 健太郎(なかみち・けんたろう)
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 パートナー
トロント、ニューヨークでの監査経験を経て、1997年に来日。金融機関・金融商品・不良債権の評価、海外資源・インフラ案件の評価、機械設備の評価、訴訟・競争法関連の評価・証言を含め、幅広い業種・状況におけるバリュエーションサービスに従事、現在に至る。