2024年5月に成立した金融商品取引法の改正は、長らく続いた
公開買付けの3分の1ルールを30%ルールに変更し、対象取引を市場内の買付けにも拡大する等、公開買付制度及び大量保有報告制度の大がかりな改正を含むものとして注目を集めた。当該改正の具体的な内容の一部は政令や内閣府令の改正に委ねられていたが、2025年3月に政令及び内閣府令の改正案が金融庁から公表され、改正の全体像が明らかとなった。今般の改正の主要なポイントについて、実務への影響が比較的大きいと考えられる点を中心に紹介する。
第1 はじめに
2024年5月15日、「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案」が成立し、同月22日に公布された(以下「本改正法」という。)。本改正法は、2023年12月25日に公表された「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ報告」(以下「WG報告」という。)における検討及び提言を踏まえたものとなっており、公開買付制度及び大量保有報告制度の大がかりな改正を含むものとして注目を集めた。
本改正法において、その具体的な内容の一部は政令や内閣府令の改正に委ねられていたが、2025年3月14日に政令及び内閣府令等の改正案が金融庁から公表され、改正の全体像が明らかとなった。
本稿では、紙幅の都合上改正内容の全てを紹介することはできないが、政令・内閣府令案の改正内容も踏まえ、公開買付制度・大量保有報告制度の主要な改正のポイントについて、実務への影響が比較的大きいと考えられる点を中心にご紹介することとしたい。
第2 公開買付制度
1 3分の1ルールから30%ルールへ
これまで上場会社等の株券等を市場外で買い付けた場合、
■筆者プロフィール■

後藤 徹也(ごとう・てつや)
2011年慶應義塾大学法学部卒業、2012~2021年長島・大野・常松法律事務所、2018年New York University School of Law修了、2018~2019年Corrs Chambers Westgarth(メルボルン)勤務、2020年ニューヨーク州弁護士登録、2021年野村證券株式会社、2021年8月より現職。M&A(公開買付け、株式譲渡・事業譲渡、資本・業務提携、MBO等)、上場会社の適時開示、大量保有報告等の金融商品取引法上の開示規制等、その他上場会社の株式を対象とする取引に関わる規制に関する対応等を取り扱う。The Best Lawyers in Japan 2024・2025・2026 Corporate Governance and Compliance Practice部門にて受賞、『実務問答金商法 第41回「種類株式と公開買付規制」』(旬刊商事法務2366号)(商事法務・2024)、『公開買付けの理論と実務〔第3版〕』(商事法務・2016)執筆担当等