ディスカウント・スーパーを展開するオーケーが好調な業況を見せている。2023年3月期は売上高が前年同期比5.5%増の5524億円、営業利益は3.1%減の290億円。営業利益は主に電気料金単価上昇の影響により減益となったものの、コロナ禍前の2020年3月期からの伸びで見れば売上高、営業利益ともに約3割増の伸びとなっている。コロナ禍がピークを過ぎ、近年は多くのスーパーが売上げを伸ばしたが、オーケーの成長は目立っている。
オーケーは「高品質・Everyday Low Price(毎日特売)」「競合店対抗値下げ」などの基本方針を掲げる。それを実現するために効率的な店舗運営や作業の標準化を進め、従業員一人当たりや売場面積一平方メートル当たりの売上高は業界内でも高い水準を維持している。経営目標の「借入れ無しで年率20%の成長」を達成するため、新店投資は営業キャッシュフローの範囲内で行う。物流効率を最大化するため国道16号線内側への出店を基本とし、マーケットが豊かな東京23区内への出店を強化中だ。近年は出店スピードが若干鈍っているものの、目標とする年間10店舗以上の出店を引き続き目指す。
2021年の関西スーパーを対象会社とするエイチ・ツー・オーリテイリングとオーケーによる争奪戦から2年が経過した。結果として買収は実現しなかったが、その後もオーケーは業容拡大への積極姿勢を緩めていない。足元の業績や経営・出店戦略についての見解、M&Aの考え方などについて二宮涼太郎社長に聞いた。
物価高でも低価格を維持 ―― 足元の業績についてどのような認識を持っていますか。
「今期は上期が終わったところですが、他社と同様、売上高は伸びています。正直なところ、物価高による単価の上昇は流通業にとってプラスの要因になっていますが、我々はディスカウント・スーパーなので『単価上昇によって売上高が上がったこと』をことさら喜ぶつもりはありません。重要なのは客数がしっかり伸びているかどうかです。売上高も
KPI(重要業績評価指標)ではありますが、物価高のいまは客数の伸びに注目しています。その意味でいえばこの上期は手応えをつかんでいます。コスト面についていえば、前期は電気料金の単価上昇が大きかったのですが、下期に向けては前年比で下がってくると思うので、そこは追い風になるかもしれません」
―― 客数を増やすためにどのようなマーケティング活動をしていますか。
「基本は値下げです。幅広い層から支持を得たいので、特定の層を狙うようなマーケティングは行っておりません。オーケーとしては、品質をしっかり吟味した上でお買い得な商品を毎日提供し、支持をいただくだけです。このような物価上昇局面でも『この商品の売れ行きが悪いので値段を一定期間ここまで下げよう』『直輸入することで同じ品質の商品をより安く提供しよう』といった具合に値下げを実現することは可能です。お客さまの支持を得て、そのお客さまが別のお客さまを連れてきてくださる形で成長していけたらと思っています」
―― マーケティング手法などに頼らず、ここまで安くできるのは驚きです。
「商品をたくさん売ること、商品をしっかり販売することに尽きるのではないでしょうか。1店舗当たりの売上高は他社と比べても高いのですが、大勢のお客さまに来ていただければたくさん販売できます。もちろん、無理な安値を追求したらメーカーも続けられないので、『これくらいの量を売ってくれるのであれば、この値段でも十分やっていけるよね』というウイン・ウインの関係を基にした値下げを意識しています」
「銀座出店」は売上が見込めるから ―― 東京・銀座の商業施設、マロニエゲート銀座への出店が話題になっていますが、このような立地に安いスーパーを開店する狙いや背景を教えていただけますか。
■二宮 涼太郎(にのみや・りょうたろう)
1974年生まれ。神奈川県出身。1997年東京大学文学部卒業、三菱商事入社。2008年11月米国のMitsubishi Cement Corporation/MCC Developmentに出向。13年2月三菱商事リスクマネジメント部。15年6月オーケーへ出向、経営企画室長。16年1月執行役員30%成長戦略室長兼店舗開発本部長。16年6月から現職