[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2022年2月号 328号

(2022/01/13)

第202回 【医療機器業界】グローバルな変化への対応を迫られる日本メーカー

―― オリンパス、テルモ、富士フイルムHDはどう動く

編集部
  • A,B,EXコース
現状維持戦略では安定的な成長は難しい

 医療機器は、内視鏡やCT、MRI、血液分析装置から、歯科向けの機器・材料、手袋、ピンセット、ガーゼ、マスクなどの医療用品まで多岐にわたる。2020年には新型コロナウイルスによる通常の患者数の減少もあって、設備投資を控える病院が増えたものの、一方で人工呼吸器や生体情報モニタに対する特需も見られた。日本の医療機器市場の規模について、みずほ証券エクイティ調査部シニアアナリストの森貴宏氏はこう見ている。

 「厚生労働省の『薬事工業生産動態統計調査』によると、医療機器の国内出荷額は2020年実績で約4兆円、国産比率は60%、輸入金額は2兆5800億円となっています。(下グラフ参照)主力プレーヤーの時価総額を見ると、2010年代後半以降は右肩上がりで推移していますが、その成長背景には、中国や米国を中心としたグローバルな人口拡大という、いわゆる“人口ボーナス”と経済の拡大がありました。しかし、中国も人口の頭打ちが見えてきましたし、GDP(国内総生産)の伸び率も昔のように高くありません。したがって、日本の医療機器メーカーが現状維持の戦略で安定的な成長を続けていくのは難しくなっており、さらなる成長のためにグローバルな変化に対応していく必要に迫られていると言えます」


グローバルプレーヤーの再編劇

 「内閣府令和元年(2019年)版高齢社会白書」によると、日本の65歳以上人口(高齢者人口)は3558万人で総人口に占める割合(高齢化率)は28.1%。今後も高齢化率は上昇を続け、2036年に33.3%、2065年には38.4%となって、国民の約2.6人に1人が65歳以上という社会が到来すると推計され、それに伴って、医療機器の需要は高まっていくと予想される。世界市場を見ると、2022年には医療機器市場の規模が53兆円近くまでいくとの予測があるが、グローバルのプレーヤーの中には1社で日本の医療機器業界全体の市場規模に匹敵する売上高を上げる企業が出現するほどダイナミックに動いている。

 主な海外の大手医療機器メーカーの売上高(2017年)を見ると、

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