[業界動向「M&Aでみる日本の産業新地図」]

2023年6月号 344号

(2023/05/12)

第218回 木材業界 ~海外木材資源の確保のM&Aと不確実性の高い国際情勢への対処~

髙瀬 雄也(レコフ)
  • A,B,EXコース
はじめに

 ここ数年間は、海外の情勢によって日本の木材価格や住宅価格が大きく変動することを余儀なくされる状況が続いた。

 最も衝撃が大きかったのが、2021年の春に始まった木材価格の高騰、いわゆるウッドショックだ。ウッドショックの震源地は、アメリカだった。当時のアメリカでは、新設住宅着工件数の急増に加えて、前年度の森林火災の多発によって、建築用木材の需給が逼迫する状態に陥っていた。その結果、アメリカは他国に木材を輸出する量的余裕を失い、アメリカ製木材が日本に流入しなくなった。海外からの木材供給の激減は、木材の海外依存度の高い日本に決して小さくないダメージをもたらした。日本の建築用の木材品価格は平時の約4倍にまで一時的に高騰し、連鎖的に住宅価格の高騰を招いた。

 2021年のウッドショックに続き、2022年のロシアによるウクライナへの軍事侵攻も日本への木材供給量の引き締めに繋がった。ロシアは日本を含む非友好国への輸出規制に踏み出し、製材品を除く原木・チップ・単板などの林産物の輸出を禁止した。当時、合板用単板の消費市場において、ロシア産への依存度が9割に近かった日本は、深刻な原材料不足を抱えることになった。

 このように、近年は日本の木材市場に衝撃を与える海外情勢の動きが続き、「グローバルな木材需給の変動に対する日本の木材市場の脆弱性」が浮き彫りになった。

 本稿では、木材資源を取り巻く産業を概観し、業界の課題に触れたうえで、その課題への対処策として活用されてきたM&A事例を取り扱う。

木材業界の全体像

 本稿において、木材業界とは、木材の生産、加工、流通および消費の一連のサプライチェーン下の各産業をいうものとする。木材業界の商流は、丸太および製品化済み木材の海外からの輸入を含めると、下図のとおりである。

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