[藤原裕之の金融・経済レポート]
(2017/11/29)
~中小食品スーパーに活路はあるか
アマゾン vs ウォルマート
米小売業界ではネットとリアルを超えた熾烈な戦いが繰り広げられている。その戦いの中心にいるのがアマゾンである。EC市場で圧倒的なシェアを占めるアマゾンだが、EC自体の売上規模は米小売業の1割程度に過ぎない。全売上の9割を占める実店舗市場を取り込むには、これまでのEC事業だけでは不十分であり、リアル市場へ直接進出する必要があると判断したのだろう。
本連載でもレジを一切通らずに買い物ができるAmazon Goなど、アマゾンのリアルシフトについては度々取り上げてきた。今年6月にはオーガニック食品などを扱う「Whole Foods Market」を買収し、リアルでの食品市場を狙う姿勢を鮮明に打ち出している。
こうしたアマゾンの猛攻に対抗すべく、米小売最大手のウォルマートはレジ無しで買い物が完了できる「Walmart Scan & Go」を24の店舗で導入した。同社はさらにグーグルと連携し、グーグルの音声アシスタント「Googleアシスタント」と即日宅配サービス「Google Express」を経由して商品を注文できるようにするなど、ネットとリアル両面でアマゾンへの対抗姿勢を鮮明にしている。ウォルマートの顧客がGoogle Expressを利用することで、グーグルはアマゾンが持っていない膨大な実店舗の顧客データにアクセスできるようになり、ウォルマートも顧客のオンライン上の行動が把握できる。
アマゾンの時価総額が示す食品市場の魅力
ウォルマートがアマゾンを脅威と捉えるのも無理はない。アマゾンとウォルマートの2016年度の売上高(連結ベース)はほぼ同じであるが、時価総額でみるとアマゾンがウォルマートを2倍近く上回っている(図表1)。アマゾンの時価総額がウォルマートを上回り始めたのはアマゾンがリアル重視を打ち出し始めた2015年半ば以降である。巨大な食品市場の取り込みに対する期待感が時価総額にも反映されている。
リアルシフトで食品市場を攻めるアマゾンの妥当性は消費者アンケートからもみてとれる。実店舗にするかオンラインにするか、商品別に購入意向を尋ねたアンケート調査(世界29地域対象)によると…
■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社を経て、2008年10月より一般社団法人 日本リサーチ総合研究所 主任研究員。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
※詳しい経歴・実績はこちら
※お問い合わせ先:hiroyuki.fujiwara@research-soken.or.jp
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