左から西脇大介マネージングディレクター、佐藤正秀代表取締役社長、西澤領太ディレクター
バイアウトファンドのMCPキャピタルは2025年3月、同社役職員が持株会社であるMCPパートナーズの全株式を取得する形で
MBOを実施した。
MCPキャピタルの源流はみずほフィナンシャルグループの運用会社みずほキャピタルパートナーズのバイアウトファンドで、21年2月に資本構成を変更して社名をMCPパートナーズに変更した。さらに同年11月、MCPパートナーズはファンド機能を分社化し、バイアウトファンドのMCPキャピタルと
メザニンファンドのMCPメザニン*を設立した経緯がある。
今回のMBOの背景と、MCPキャピタルが得意とするロールアップ投資事例としてプロパックホールディングス(プロパックHD)での取り組みについて、佐藤正秀代表取締役社長、西澤領太ディレクター、西脇大介マネージングディレクターに聞いた。
*本MBOに伴いMCPパートナーズ子会社のMCPメザニンとMCPファミリアは各社役職員を中心とした株主構成となり、グループから独立した 投資家の要請に応えてMBOを決断 ―― 今回のMBOに至った背景を教えて下さい。
佐藤 「当社は2000年にみずほフィナンシャルグループ傘下のみずほキャピタルパートナーズとしてプライベートエクイティ業務を始めたのが出発点です。当時は株主だけでなくLPの大半がみずほグループだったことや、利益相反やガバナンスに対する感度が現在ほど高くはなかったこともあり、特定株主傘下でのファンド運営(以下、キャプティブファンド)が容認される時代でした。
それから25年が経ち、クライアントであるLP投資家のために考えて行動する『
フィデューシャリー・デューティー(FD)』の責務は、我々PEファンドにとって最重要の規範となっています。そしてFDの観点で投資家は、特定株主がファンドをコントロールし得る、あるいは影響力を及ぼし得る構造に対して懸念を抱くようになっています。例えば『LPが支払う管理報酬はファンドパフォーマンスのために使われているのか』とか『投資家よりも株主の利益を優先するのではないか』など、実際に起きているかどうかではなく、起き得る構造自体が問題視されるようになっています。
2021年のMCPパートナーズ設立時にみずほグループの出資比率を100%から15%以下に引き下げ、残りは他の金融機関と役職員持株会が保有することになりましたが、役職員持株会の保有比率は数%程度でした。つまり、みずほグループの比率が低下して懸念は薄まったものの、もし他の株主が集まって何かを要求されたら断れない状況に変わりはありません。『LP投資家と同じ利害関係のもとで動いているのかがわかりづらい。その問題を解消してほしい』という声はその後もいただいていて、それが今回のMBOにつながりました」
■佐藤 正秀(さとう・まさひで)
国内および米国の金融機関にてコーポレートファイナンス、M&Aアドバイザリー等に従事。2000年代半ばからMCPキャピタルにて多くの投資案件を手掛ける。
■西澤 領太(にしざわ・りょうた)
MCPキャピタル参画以前は、アーサー・ディ・リトル・ジャパンにて、製造業・商社等を中心に、中期経営計画策定、事業戦略策定、新規事業策定、業務改革支援、M&A(事業DD、PMI)等のコンサルティングに従事。それ以前は、丸紅にて海外発電事業に関わるM&A、PMI、資産管理業務に従事。MCPキャピタルにて、互応化学工業、ジャパンホームシールド、コミネ、高崎事務器を担当。
■西脇 大介(にしわき・だいすけ)
MCP キャピタル参画以前は、独立系投資ファンドにてプライベートエクイティ投資業務に従事。それ以前はKPMGにてM&Aアドバイザリー業務、法定監査業務等に従事。MCPキャピタルにて、さら、小寺電子製作所、互応化学工業、高崎事務器、ニュー・クイック、神田電子工業、プロパックホールディングス等を担当。