[視点]

2019年5月号 295号

(2019/04/15)

AI時代の事業開発型M&Aをどう進めるべきか?

塩野 誠(経営共創基盤 取締役マネージングディレクター、JBIC IG Partners 代表取締役CIO)
  • A,B,EXコース
AI研究チームを買うM&A

 AI(人工知能)が人間の能力を超えるかも知れない。そんな感覚を一般にもたらしたのは2016年にアルファGOが碁の人間代表に勝利した時だろう。そのアルファGOを創り出したのは英国に拠点を置くディープマインド社であった。ディープマインド社はAI研究者の間でもエリート中のエリートを集めたベンチャー企業として知られていたが、2014年にグーグルに約6億ドルで買収された。買収される際に同社はグーグルに対してAIに関する倫理委員会の設置を求めたとされる。グーグルによるこの買収は当然、世界でもトップクラスのAI研究者のチームを買うAcqui-hiringと考えられた。
 台頭する巨大プラットフォーマーであるGAFA(グーグルアップル、フェイスブック、アマゾン)はインターネット、ソフトウエアの世界のみならず自動運転や物流といった「ものづくり」やリアルな世界にも大きな影響を及ぼしつつある。我が国の自動車業界や小売業界はGAFAと組むのか、それとも迎え撃つのか、将来を決める意思決定を迫られている。
 GAFAが持つ武器とは何か?それは膨大なデータと精緻なアルゴリズム(AI)である。アルゴリズムはコンピュータ・プログラムによって実装されるソフトウエアであるが、現在のAIの中心である機械学習によって最適化、画像認識、推薦、予測などを可能にする。こうした機能においてAIは時には人間を超える能力を持つ、例えば自家用車を保有し、空いた時間を活用したい人と、目的地までの交通手段が欲しい人をマッチングするウーバー(UBER)のようなライドヘイリングサービスはAIによる最適化をリアルタイムで行っている。あなたがスマートフォンで買い物をすれば、その閲覧履歴が解析されて興味を惹くような広告が表示されるだろう、その裏でも最適化が行われている。そしてグーグルやウーバーのような米国シリコンバレーの企業はAIの研究開発のために米国の一流大学でコンピュータサイエンスを学んだ研究者を獲り合い、大量に採用している。今では学部を卒業したばかりの学生でさえ、1500万円~2000万円といった年収が提示されるのも珍しくなく、著名な研究者では億円単位の年俸が提示される。


「ウチのAIはどうなっている?」と言う経営者

 グローバルにAI人材と技術の争奪戦が行われるなか、我が国の企業もAI技術者やデータサイエンティストをどのように自社に取り込むかが課題となっている。自社に

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