[Webインタビュー]
(2013/07/10)
社内リソース不足をどうやって補うか
―― 日本は「アベノミクス」による大胆な金融緩和政策で、超円高から円安へと大きく振れていますが、日本企業による海外企業の買収という観点で、この円安環境をどう見ていますか。 「円安というのは、IN-OUT型買収にとってはネガティブな条件であると見られるかもしれませんが、M&Aは必ずしも価格だけで判断するものではありません。M&Aは価格的に高くつくかどうかではなく、経営者の戦略面でのコンフィデンス(自信)に影響される部分が大きいと思います。『アベノミクス』による円安は経営者のコンフィデンスを高めるという意味では非常にプラスに作用していると思いますので、トータルすると円安がIN-OUTの買収に対して与えるマイナスの影響は大きくないと見ています」
―― 円高のもとで日本企業はIN-OUTのM&Aを積極的に進めてきました。大企業はM&Aに精通したスタッフもいますが、中堅・中小企業の場合は成長市場の開拓のために新興国を中心に海外M&Aを行
いながら、PMI(M&A後の統合プロセス)に悩んでいるところが少なくありません。
「中堅・中小企業の場合、M&Aの経験が乏しいことから買収を行う時の社内リソースの問題に直面するのだと思います。そうした企業は第一に、海外企業の買収を検討する時にしっかりしたFA(フィナンシャルアドバイザー)を使うということを考えるべきです。それから買った後のマネジメントについてですが、日本人が買った後の経営を見るということにはどうしても限界があります。したがって、既存のマネジメントチームを活用していくことを基本に考えなければなりません。そのために、買収時に当該企業のマネジメントチームが優秀かどうかの見極めをFAの協力を得ながらしっかり行うということが必要です」
買収ターゲットの見つけ方
―― 自社の戦略に合致する買収可能な非上場企業をどうやって見つけたらいいのでしょうか。
「買収ターゲットの見つけ方で大事な点の1つは、自社の戦略を明確にした上で、買う価値があるかどうかという面から十分に会社を絞り込んでいくことです。その時、対象となる企業に関する情報については、自分たちが持っている情報やその業界に詳しいコンサルタントが持っている情報を使って、シナジーがある先を十分時間をかけてリストアップしていくという作業が必要です。2点目は、プライベート・エクイティ(PE)ファンドが持っている会社をもっとよく見るべきだということです。大企業がノンコア事業であるとして売却する子会社がありますが、こうした企業の場合、親会社が成長性がないと判断して売却するケースが少なくありません。ですから大企業のノンコア事業というのは、必ずしも魅力的ではない場合が多いのです。それから同族会社の場合、経営陣が長年同族によって占められてきたというケースが多いことから、必ずしもマネジメントが優秀かどうかというのは定かではないということにも注意する必要があります。そういう意味で、PEファンドが持っている会社、プロがマネジメントしている会社もリストの中に入れて検討していくということがいいのではないかと思います」
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