[企業変革手段としてのM&Aの新潮流 Season2]

2023年1月号 339号

(2022/12/09)

第7回(最終回):M&A・アライアンスによるグリーントランスフォーメーション(GX)の実現

尾島 健(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー)
中村 司(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー)
白鳥 聡(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー 執行役員)
  • A,B,EXコース
1.グリーントランスフォーメーション(GX)が求められる背景

 2050年の「温室効果ガスの実質排出ゼロ」の実現に向けた社会的要請や規制強化が始まっている。特に、CO2排出量の多い産業ほど、気候変動への取り組みに対するステークホルダーからのプレッシャーが大きく、また政府・消費者からの期待も大きい。自動車業界等を中心に、サプライヤーや原料産業にも影響が及んでいる。このような事業環境の変化に対応するため、グローバル企業および国内大手企業では、脱炭素・カーボンニュートラルを通じた企業価値向上を図る、グリーントランスフォーメーション(GX)を目的に、“カーボンニュートラル推進組織”の設置が増加している。

 一方で現在、この“カーボンニュートラル推進組織”を設置したものの、「実際に何をすべきかわからない」という声も、一定数の企業で存在する。以上を踏まえ、本稿では、直近の事例を交えつつ、「どのようにGXに取り組むべきか」を事業変革の観点から紹介する。

2.GXによる「新たな市場」の登場による、「事業創造のチャンス」と「変化への対応」

 上述のGXが求められる背景をきっかけとして、近年、脱炭素・カーボンニュートラル領域における「新たな市場」が、幅広い分野で、次々と登場・拡大している。GXを背景に立ち上がった市場の一例として、水素・アンモニア、メタネーション、CCS・CCUS、CO2を活用したコンクリート・セメント、持続可能な航空燃料(SAF)、次世代生産方式のプラスチックなど、枚挙にいとまがない。さらに、政策・規制の強化や、ステークホルダーからの圧力に伴い、脱炭素・カーボンニュートラル関連の投資の増加が見込まれており、今後も、複数の業界を跨る形で、「新たな市場」の登場が予想される。

 このように、GX関連領域の範囲は広い。市場の全体像や最新トレンドをリアルタイムで把握することが難しいが、

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