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(2023/08/07)

筆頭株主と出資先企業とが不透明な「親子」間契約 情報公開により少数株主保護を~東証でも議論が白熱

前田 昌孝(マーケットエッセンシャル主筆、元日本経済新聞編集委員)
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ポイント
〇親子上場批判の高まりを背景に、「上場子会社」が減り「上場関連会社」が増えている
〇上場会社の親子間契約が不透明な現状が浮き彫りに。少数株主の保護、海外からの投資呼び込みという観点でもマイナス
〇産業界とどう折り合いをつけ、子会社・関連会社の経営の自立性を高めるためのルール整備を図るか、東証の施策に注目
「親子上場」と「親子間契約」に焦点当たる

 親会社の出資比率は50%未満だから、「子会社上場」ではなく、関連会社が上場しているに過ぎないが、それでも「親会社」が「子会社」の取締役候補を提案する「親子間契約」を結んでいる例が目立つとの指摘がある。実質的な「経営支配」といってもいいのに、問題は契約の存在を公開していないことについて、東京証券取引所も「子会社」の少数株主の利益に反するのではないか、と関心を持っている。

 子会社の少数株主保護の問題は東証が2020年1月に設置した「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」で継続的に議論している。2020年9月に中間整理をとりまとめた後、しばらく休会していたが、2023年1月から第2期の議論に入った

 研究会の再開に当たり、事務局を務める東証は、親会社を持つ上場会社323社と、その他の関係会社を持つ上場会社603社の合計926社を対象に実施した調査の結果として、討議資料を提出した(東証「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会(第2期) 第1回 東証説明資料」)。

 上記資料によれば、まず親会社が50%以上出資する上場子会社(親会社を持つ上場会社)については、回答を寄せた314社のうち25.2%に当たる79社が親子間でガバナンス(企業統治)に関する契約を結んでいたという。契約内容は様々だが、件数で多いのは子会社の意思決定に先立って事前承諾や事前協議をすること(49社)、役員候補者や経営陣幹部の指名等(34社)、株主の持株比率維持や希薄化防止(21社)などだった。

 ところが、図表1に示すように、上場子会社がコーポレートガバナンス報告書で契約の存在を開示しているのかというと、非開示のケースが目立つ。

(図表1)上場子会社によるガバナンスに関連する親会社との契約の開示状況
 契約あり開示
ありなし
役員候補者・経営陣幹部の指名等34529
株主の持株比率維持・希薄化防止21120
株主が保有する株式の処分や追加取得その他株式の取り扱い17116
株主の議決権行使101
事前承諾・事前協議491732
事業競合の回避・事業調整716
上場維持16511
独立社外取締役の登用・活用615
独立性・自主性の尊重等432023

(注)数字は企業数
(出所)東京証券取引所「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会(第2期)第1回説明資料」

 例えば、



■ 筆者履歴

前田 昌孝

前田 昌孝(まえだ・まさたか)
1957年生まれ。79年東京大学教養学部教養学科卒、日本経済新聞社入社。産業部、神戸支社を経て84年に証券部に配属。97年から証券市場を担当する編集委員。この間、米国ワシントン支局記者(91~94年)、日本経済研究センター主任研究員(2010~13年)なども務めた。日経編集委員時代には日経電子版のコラム「マーケット反射鏡」を毎週執筆したほか、日経ヴェリタスにも定期コラムを掲載。
22年1月退職後、合同会社マーケットエッセンシャルを設立し、週刊のニュースレター「今週のマーケットエッセンシャル」や月刊の電子書籍「月刊マーケットエッセンシャル」を発行している。ほかに、『企業会計』(中央経済社)や『月刊資本市場』(資本市場研究会)に定期寄稿。

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