[Webインタビュー]

(2016/09/14)

【第73回】コア事業の収益拡大に向けた戦略的事業売却のポイント

 ピーター・ケネバン(マッキンゼー・アンド・カンパニー シニアパートナー)
 野崎 大輔(同 パートナー)
  • A,B,EXコース



コーポレートステラテジー策定の判断軸


―― 近年、日本企業による海外M&Aの増加傾向が続いていますが、その一方で、コア事業の成長を狙った戦略的な事業売却というケースはまだまだ少ないように思います。そこで、マッキンゼー・アンド・カンパニー(以下マッキンゼー)のコーポレート・ファイナンスグループで日本企業の成長戦略のためのM&Aなどを担当しておられるお2人に、コア事業の収益拡大に向けた戦略的売却のポイントについてお話をうかがいたいと思います。

ケネバン 「日本企業が関係したクロスボーダーM&Aの件数をレコフM&Aデータベースで見ましても、2015年には年間766件行われましたが、そのうち日本の企業が事業あるいはグループ企業を売却したケースは、206件に留まっています。


 私は約15年間、日本企業の成長戦略策定についてコンサルタントとして関わっていますが、買収に関しては知識も技術的にもかつてとは比べものにならないぐらい日本企業のレベルは高くなっていると思います。しかし、一方の売却については、おっしゃるように思うように進んでいないというのが現実ですね。その背景としては、ドラスチックに事業再編を行いにくい日本独特の企業文化ということもあるかもしれませんが、ポイントはコーポレートステラテジーをどういう考えのもとに策定すべきかの判断軸の問題だと思います。端的に言ってしまえば、ROIC(投下資本利益率)、ROE(株主資本利益率)が収益性向上のための不採算事業売却の重要な判断指標になると思うのですが、それが議論を進める上できちんと押さえられていないというケースが少なくないように思います」

野崎 「日米の上場企業のうち、売上トップ100社の15年のROEを比較して見ますと、日本企業の平均は7.4%であるのに対して、米国企業の平均は17.9%となっていまして大きな差があります。また、米国の売上高トップ100社のうち、約8割が10%以上のROEがあるのに対して、日本企業の場合は逆に10%未満の企業が全体の8割近くを占めています。一方、日米の1社当たりの平均事業(セグメント)数について見ても、日本が4.8に対して米国は3.1です。それだけ事業の絞り込みが米国企業では進んでいるという見方もできるのではないかと思います。そのセグメント別の利益率を見ましても…

 

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