[M&A用語]

ジュピターテレコム事件

英語 :Jupiter Telecommunications case

(最決平成28年7月1日民集70巻6号1445頁)

公開買付けと全部取得条項付種類株式を用いた二段階買収による非公開化案件(いわゆるスクイーズアウト取引)について、株式の取得価格が争われた事件。
公開買付けの開始前において、公開買付者は対象会社の議決権の70%超を直接・間接に有しており、構造的に利益相反のおそれのある取引であった。

最高裁判所は、構造的な利益相反のある取引であっても、手続きが公正である場合には取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じていない限り、全部取得条項付種類株式の取得価格は公開買付価格と同額になるとし、当事者の定めた価格を尊重するという判断を示した。


(事件の概要)
2012年10月、住友商事とKDDIは、合計で70%超の議決権を直接・間接に有し、当時JASDAQに上場していた株式会社ジュピターテレコム(以下「JCOM社」)の株式について、公開買付けを行った後、100%子会社化するために全部取得条項付種類株式を用いた少数株主のスクイーズアウトを行うことを公表、2013年8月に100%子会社化が実行された。
JCOM社の一部の株主は、会社172条1項(平成26年法律第90号による改正前のもの)に基づき、全部取得条項付種類株式の取得価格決定の申立てを行った。

最高裁判所は、下級審決定を覆し、『多数株主が株式会社の株式等の公開買付けを行い,その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど多数株主等と少数株主との間の利益相反関係の存在により意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられ,公開買付けに応募しなかった株主の保有する上記株式も公開買付けに係る買付け等の価格と同額で取得する旨が明示されているなど一般に公正と認められる手続により上記公開買付けが行われ,その後に当該株式会社が上記買付け等の価格と同額で全部取得条項付種類株式を取得した場合には,上記取引の基礎となった事情に予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り,裁判所は,上記株式の取得価格を上記公開買付けにおける買付け等の価格と同額とするのが相当である』と判示した。

最終更新日 2020/3/8

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更新日:2022年04月19日

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