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[【企業変革】価値創造経営の原則と実践(マッキンゼー・アンド・カンパニー)]

(2021/06/09)

【第6回】価値創造のための戦略

野崎 大輔(マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 パートナー)
呉 文翔(マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 アソシエイト・パートナー)
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 戦略の定義にはそれについて書かれた本の数だけその定義があると言われている [1]。そのため本稿では新たな定義を設定する意図はなく戦略の定義などについては最低限にとどめ、よりその実践について述べていきたい。なお本章では戦略について明記していない限り、事業戦略について述べており全社戦略については言及しないものとする。


【戦略とはWhereとHowである】

 戦略の定義そのものは多く存在するが基本的には”Where to compete”、つまりどの市場で戦うべきかという視点と”How to compete”、すなわち当該市場でどのように戦うべきかの二つの視点を含んでいることが多い。前者は直接的には制御不能な外部環境であり、後者は直接制御可能な内部環境である。経営戦略論の古典的なフレームワークとして1939年にエドワード・メイソンによって考案されたSCPモデル (Structure, Conduct, Performance)が挙げられるが、これもStructureは産業構造であり、Conductは企業行動であり、それらが企業の業績(Performance)を決めるという考え方であり、市場と企業行動を分離して考えている。

 全社戦略の議論に用いられるフレームワークにTOWSというものがある。TOWS分析とは、SWOT分析でまとめたStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)を掛け合わせ、具体的な戦略を検討することで、このフレームワークもやはり外部環境、内部環境に分離した発想が根底には存在していると考えていいだろう。戦略を検討するとはWhereとHowの二つを考えることを意味するのである。

【企業行動よりも前に市場を考える】

 このように市場と企業行動に分離して戦略を考えることが定石ではあるが、順番論は存在する。あくまでも市場を初めに選択し、次に企業行動を検討するのである。企業行動は市場が選択されていないと決めようがないため、これは一見自明ではあるが、市場構造によってある程度価値創造の度合いは規定されてしまうため、市場選択は極めて重要である。主要産業ごとのROIC (投下資本利益率;Return On Invested Capital)の中央値を見ると産業によって大きく差がある [図1]。もちろん市場だけでは業績は規定されず企業行動も重要である。産業ごとのROICの中央値には差があると述べたが、同じ産業内でもやはりROICには大きな差が存在しており、この幅は企業行動の優劣と解釈することができるだろう。ただし、それはあくまでも市場を決めてから考えるべきことなのである。

[図1]

【市場は適切な粒度で考える】

 このように市場選択は重要であるが、この市場の定義は厳密に考える必要がある。

....

マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社

■筆者略歴

野崎 大輔(のざき・だいすけ)
マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 パートナー

日本における戦略・コーポレートファイナンス研究グループのリーダー。
M&A、合弁事業立ち上げやその他のパートナーシップ締結、事業統合マネジメント、戦略立案、次世代リーダー育成など、幅広い分野に従事。日系企業のM&Aプロジェクトのプロセス全般における支援のほか、製造業、資源・エネルギー、消費財、ヘルスケア、戦略的投資家、機関投資家など、幅広いクライアントに関わる数多くのプロジェクトに従事。Kohlberg Kravis Roberts (KKR) およびゴールドマン・サックスでの勤務経験を持つ。

東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。



呉 文翔(くれ・ぶんしょう)
マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 アソシエイト・パートナー

ポートフォリオ戦略、企業買収や事業売却などのコーポレートトランザクション、統合マネジメント、投資先企業の事業価値向上施策立案など豊富な専門的知見を活かして主にプライベートエクイティファンドや総合商社のクライアントにコンサルティングを提供。資源・エネルギー、電力、消費財、ヘルスケアなど、幅広い分野において数多くのプロジェクトに従事。
2015年からマッキンゼーの東京オフィスに参画。マッキンゼー入社以前は三井物産にてエネルギーセクターでの事業投資案件に従事し、数多くのクロスボーダーM&A案件を担当してきた経験を持つ。
慶應義塾大学法学部法律学科(学士)卒業/ハーバード大学経営学修士(MBA)修了。


柳沢 和正(やなぎさわ・かずまさ)
マッキンゼー・アンド・カンパニー 日本支社 パートナー(寄稿記載当時)

日本におけるプライベートエクイティ・プリンシパルインベストメント研究グループのリーダーとして、プライベートエクイティおよび商社の成長戦略、M&A戦略、ビジネス・デューデリジェンス、買収後のバリューアップ、売却などのコンサルティングサービスを提供。加えて製造業企業から消費財企業まで幅広いクライアント企業に対して戦略立案やコーポレートファイナンスに関するコンサルティングサービスを提供。
東京大学工学系研究科修士課程修了。





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