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[ニューノーマル時代の日本企業M&Aの指針]

2021年7月号 321号

(2021/06/15)

第7回 事業買収・売却におけるスタンド・アロンイシュー(HR)、従業員転籍への対応

白川 雄一(マーサー ジャパン M&Aアドバイザリーサービス部門 マネージャー)
M&A市場の復調(事業買収・売却案件の増加)

 新型コロナウイルス対策として最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月から、早1年が経過したが、パンデミック収束には至っていない。しかしながら、各国で状況は異なるが、ワクチン接種普及のための取り組みなど状況改善に向けた明るい兆しもある。最近のNYダウ最高値更新に象徴されるように、経済活動も徐々に活発になってきているように感じる。

 昨年は、M&A市場全体(日本)の投資金額が大幅減であったと聞く。昨年から本年上半期にかけて、筆者がご支援させていただいたM&A案件を振り返ってみると、パンデミックによる事業活動への影響を見通すのが難しい中で、M&A検討の中止に至ったケースもあった一方で、パンデミックの影響は限定的で業績堅調、あるいは逆に需要が急増し業績好調な企業を対象にM&Aを実施するケースもあった。特に昨年のM&A市場の様相は、業種によって大きく異なっていた印象である。

 データで見た直近のM&A市場動向はどうだろうか。MARRのM&A統計によれば、2021年1-3月期の日本企業のM&A件数は1058件と、2020年1-3月期の989件から69件、7.0%の増加となっており、1-3月期では、これまで最多だった2019年の1024件を上回り、最多を更新したとのことである。

 形態別内訳は、合併11件、買収363件、事業譲渡139件、資本参加502件、出資拡大43件で、全ての形態で前年同期比増加になっている(注1)。

 M&A市場全体(日本)が復調傾向にあるのも事実だが、武田薬品工業による一般用医薬品事業売却、資生堂によるパーソナルケア事業売却など、日本企業が積極的に事業売却を進めるケースも増えてきたことに筆者は注目している。このような流れは一過性のものではなく、従来型の業績悪化によって仕方なく事業売却を決断するケースに加えて、業績が好調なうち(企業価値が高いうち)に戦略的に事業売却を行うというケースが今後も増えていくのではないだろうか。

 このようにディール難易度の高い事業買収・売却案件が増加傾向にある中なので、今回は事業買収・売却案件におけるHR領域の難所である、スタンド・アロンイシュー(HR)、従業員転籍への対応について、取り上げたい。


スタンド・アロンイシュー(HR)の検討・対応プロセス

 事業買収・売却案件においては、スタンド・アロンイシューへの対応が大変であるということは、M&A当事者・関係者の間では、よく耳にすることである。そもそもスタンド・アロンイシューとは何のことを指すだろうか。簡単に言うと、事業買収では株式買収と違って、対象会社の一部分(特定の事業)のみを買収するという案件の性質上、売り手がグループ全体として提供していた管理機能、制度について、買い手が引き継ぐことができないという事態に直面するということである。

 なお株式買収のケースであっても、例えば売り手子会社の買収の際、そのような管理機能、制度が当該子会社ではなく、売り手親会社によって提供されている場合にも、同様の事態に直面する場合があるので注意が必要である。

 会社全体で考えると、経営企画、財務・経理、法務、HR、IT、購買、生産、品質管理等、全ての領域においてスタンド・アロンイシューは存在するため、全社をあげて対応が必要となるが、本稿では、筆者が従事しているHRコンサルティング領域に関わる、スタンド・アロンイシュー(HR)に焦点を当てる。

 スタンド・アロンイシュー(HR)を端的に定義すると、

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