[【小説】経営統合の葛藤と成功戦略]
2014年9月号 239号
(2014/08/15)
山岡ファイナンスサービス社と渋沢ファイナンスコーポレーション社は、1年半に及ぶ準備期間を経て、ついに経営統合初日を迎えた。新会社の取締役議長に就任した野澤博人を中心に新たな経営体制がスタートする中で、渋沢FC社前社長の飯塚良は、静かに自ら幕引きをしようとしていた。
全社員が新たな門出を迎える中で、物理的な組織融合も開始された。そんな中で、組織末端に近い社員ほど多くのフラストレーションを溜めつつあった。
統合初日
両社の経営統合初日は、朝8時からの持株会社設立記念式典から始まった。両社の共同持株会社の名前は「みらいフィナンシャルサービス・ホールディングス」である。経営統合により総合商社である山岡グループと、メガバンクである渋沢グループの双方の大株主の影響力が薄れることもあり、旧来の名前を想起させない全く新たな社名が付けられたのだ。当初は「山岡渋沢」のようにダブルブランドの社名も検討されたが、野澤博人と飯塚良の両社社長から「ナンセンスだ」と一蹴された。両社長ともに、経営統合により自立した全く新たな会社を生み出さなくてはならないという強い問題意識があり、安易にグループ系列名称を用いるなど言語道断と考えたのだ。
設立記念式典には、ホールディングスのボードメンバーに加えて、傘下の事業会社となる山岡FS社と渋沢FC社の役員全員が参加した。ただしホールディングスの取締役の中で、事業会社役員を兼務していないのは持株会社の取締役会議長に就任した野澤だけである。ホールディングスの社長に就任した安藤雄三は、渋沢FC社の社長を兼務している。同様に持株会社の副社長となった田中宏明は、山岡FS社の社長を兼務している。その他にも両社数名ずつが持株会社と事業会社の役員を兼務しており、野澤と本日から着任した安藤を除くほぼすべての人間がまだ「持株会社」というものを強く意識できず、事業会社代表という面持ちで式典に参加していた。
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