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2019年8月号 298号

(2019/07/16)

部分買付けに関する覚書

飯田 秀総(東京大学大学院法学政治学研究科 准教授)
第1 はじめに

 部分買付けは、買収後も対象会社の上場を維持する目的などで実際に活用されている。日本の大手企業同士の敵対的公開買付けとして初の成立例といわれる、伊藤忠商事株式会社による株式会社デサントに対する公開買付けは、まさに部分買付けだった(注1)。
 部分買付けとは、公開買付けにおいて、買付株式数に上限を付けて行うものである。たとえば、40万株を上限として公開買付けを行い、これに対して50万株の応募があった場合、40万株までは買うが、それを超える10万株については買わないとすることができる。この場合、もしも応募順で、つまり、早い者勝ちルールで、40万株を買うとしてしまうと、対象会社の株主は熟慮する間もなく応募しようとするおそれがあるので、按分比例によって買い付けられることとなる。この例でいえば、応募総数が50万株で、買付総数が40万株であるから、応募株式の80%が買付けられ、残りの20%は応募株主に返却されることとなる。たとえば、1000株を応募した株主がいれば、800株は公開買付けで買い付けてもらえるが、残りの200株は返却されることとなる(金融商品取引法27条の13第4項2号、5項)。
 日本の公開買付規制には、部分買付の容認と禁止が段階的に存在する。すなわち、公開買付け後の公開買付者の株券等所有割合が3分の2以上となる場合には、部分買付けは禁止される。すなわち、この場合、全部買付義務のルールが適用され、公開買付者は、応募株券等の全部を買い付けなければならない。しかし、公開買付後の公開買付者の株券等所有割合が3分の2を下回る場合には、部分買付けが容認されている(金融商品取引法27条の13第4項、金融商品取引法施行令14条の2の2)。
 立法論としては、現在の全部買付義務の規制については学説から批判されている。なぜならば、全部買付義務は少数株主の保護を意識しているにもかかわらず、その保護の対象は公開買付けに応募した株主に限定されるからである。つまり、公開買付けに応募しなかった少数株主は保護されない。また、市場取引など公開買付け以外の手段で3分の2以上を取得した買収者が登場しても、少数株主には特段の保護の制度はない。要するに、少数株主保護という視点から見れば、現在の全部買付義務の制度は、中途半端である(注2)。
 このような規制になっていることの是非を評価するには、そもそも部分買付けを容認することが好ましいのかどうかを考える必要がある。本稿は、その基本的な考え方を整理することを目的とする。部分買付を容認することには、メリットとデメリットがあるので、それを検討する。


第2 部分買付けのメリット

1 買収者の資金制約の問題への対応

 もしも部分買付けが禁止される法制度の下では、対象会社の全株式を買収するのに十分な資金を調達できない者は、買収を

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