このようななかで目立つ動きは、MBOを公表した案件にアクティビストが介入するケースが相次いで起こっていることである。レノやシティインデックスイレブンス(以下、シティ)などの旧村上ファンド系を中心に、2017年以降、8つのケースを数える(表1)。その過程でTOB(Take Over Bids:株式公開買付け)が成立した案件もあれば、買付価格の引き上げにもかかわらず、必要とする買い付け数に達せず、不成立になった案件も存在する。
こうしたアクティビストの介入は、Bump(衝突)とArbitrage(アービトラージ:鞘取り)を掛け合わせて、Bumpitrage(バンプトラージ)と称される(太田 2023)。こうした行動は、どのように評価されるのであろうか。それには肯定的なものと、否定的なものとがある。前者としては、アクティビストはフリーキャッシュフローを抱える企業をもっぱらターゲットとしており、介入を通じ株主還元を実現し、株主の富を創造しているという見方である(Jensen 1986)。また、ノンコア事業の売却や資本政策の変更など、アクティビストの経営要求が“wake up call”(Chatterjee et al. 2002)となり、仮に要求が通らなくとも、経営陣の経営政策変更の呼び水となり、株主価値向上に向けた動きを促進しているという捉え方もある。
一方で、アクティビストの介入行為に疑問を投げかける声は根強い。その代表的なものは、アクティビストはブロック取引とそれに基づく経営要求を通じて、一時的な株価の引き上げを狙い、単なる「鞘取り」、あるいは”stock picking”(Becht et al. 2008)を行っているだけに過ぎないという見方である。このケースでは、アクティビスの介入で経営が混乱することにより、経営陣はその対応で時間を浪費し、肝心の経営執行に専念できないため、株主価値にネガティブな影響を及ぼすおそれがある。