[Webインタビュー]

(2023/05/19)

【第159回】三菱商事の100%出資会社丸の内キャピタル、後継者不在企業への支援を強化

藤田 正敦(丸の内キャピタル 社長)
  • A,B,C,EXコース
藤田社長
ポイント
〇1000億円規模目標の3号ファンド立ち上げを控え、2022年12月のタイミングで、三菱商事の100%出資会社に
〇注目テーマは事業承継、業種としてはコンシューマー/リテールやニッチトップ製造業に加え、TMT(Technology, Media, Telecommunications)やソフトウェア分野にも注力
〇三菱商事系のPEファンド運用会社であることを武器に、丸の内キャピタルならではの投資を実施
資本関係の変遷

―― 丸の内キャピタルは現在、どのようなPEファンド運用会社に成長していますか。

「丸の内キャピタルは、2008年4月に三菱商事と三菱UFJ銀行が50%ずつ出資するPEファンド運用会社としてスタートし、2016年の2号ファンド組成時に三菱商事85.1%、三菱UFJ 銀行14.9%出資となりました。3号ファンド立ち上げを控えた2022年12月のタイミングでは、三菱商事の100%出資会社へと体制変更を実施しました。

 丸の内キャピタルが投資対象としてターゲットにしているのは、投資規模にして50億円から200億円程度の中規模案件です。特に最近は、事業承継型案件に注目しています。日本では、東証上場企業の中でも社長または創業家が一定以上の株式を保有している企業が相応に存在しています。また、社長の高齢化も進んでおり、多くの企業が事業承継ニーズを有しています。プロの経営者を求めている後継者不在企業に対しては、積極的に関与したいと考えています。創業家にとって、自分が育てた会社をどの会社に売却するかは非常に大きな問題ですから、三菱商事の100%出資会社であるという信用力は大きな強みです。

 2023年3月末には、3号ファンドを402億円でファーストクローズしました。今後1年間でファンドの規模を拡大し、2号ファンドと同水準の1000億円規模までファンドを大きくすることを目指します」

―― 三菱UFJ銀行との資本関係を解消し、三菱商事グループの支配下にあるキャプティブファンドと認識される場合もあるようです。

「私たちは自社を『コーポレート・スポンサード・ファンド』と呼んでいます。三菱商事はあくまで丸の内キャピタルをスポンサーとしてバックアップする立場であり、投資にかかる意思決定には一切関与せず、丸の内キャピタルが独立して投資活動を実施しています。丸の内キャピタルは三菱商事の機能を活用しながら、公平な立場で投資先企業の価値向上に取り組んでいます。三菱商事が投資先企業のバリューアップに関与した一例としては、成城石井での物流拠点集約化が挙げられます。三菱商事グループと共に物流コスト削減方法を検討し、実現にこぎつけました。三菱商事は世界中で取引を行っており、投資先企業のビジネスにも何かしら三菱商事が関わっているものがあります。何か訊きたいことがあればすぐに電話で相談できるような関係性は非常に貴重です。ただし当然ながら、三菱商事の関与は投資先企業にとってメリットがある場合に限ります。

 三菱UFJ銀行が出資から外れたのは、国際的な銀行規制の強化の影響が大きいですが、良好な関係性は現在も続いています。実際に、3号ファンドには三菱UFJ銀行も主要LP投資家として参加しており、引き続き案件の紹介も受けています」

三菱商事とPEのプロ人材を融合

―― 丸の内キャピタルの人材はどういった構成ですか。


■藤田 正敦(ふじた・まさのぶ)
慶應義塾大学総合政策学部卒業後、1996年に三菱商事に入社。ノースウェスタン大学のケロッグスクールでMBA取得。三菱商事入社後は、財務部で資金調達関連業務を経験し、2005年より三菱商事内のM&Aアドバイザリー/バイアウト投資業務に従事。その後、三菱商事の在米金融子会社のVP及びCFOを務めた。ニューヨーク在勤中に在米事業再生ファンドであるKPS Capital Partnersに出向し、2008年のリーマン・ショックの最中には、KPSで自動車部品、高級食器メーカー含む数々の買収及び事業再生投資案件に関わった。2010年から三菱商事の金融企画ユニットで米国、韓国、香港のアセットマネジメント会社の買収、子会社設立に携わり、2014年よりダイヤモンド・リアルティ・マネジメントの取締役事業企画本部長として数々のインバウンド、アウトバウンドのファンドを組成した。2018年から米ロサンゼルスにて米国私募REIT運営会社の社長を務め、2021年三菱商事の企業投資部長として勤務後に現職に就いた。

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