ポラリス・キャピタル・グループ(ポラリス)は2025年4月、ポラリス第五号投資事業有限責任組合等が保有していたプリント配線板メーカー、リンクステックの全株式を、台湾の電子部品メーカーPSAグループ傘下のGlobal Brands Manufacture Ltd.(GBM)へ譲渡した。
投資実行から
イグジットまでの取り組みと、今後のポラリスの投資活動について、代表取締役社長の木村雄治氏に聞いた。
製造業のカーブアウト案件 ―― 本案件では、昭和電工マテリアルズ(現レゾナック)が全額出資子会社を設立後、2021年10月にポラリスが新会社の全株式を取得しリンクステックとして再スタートしています。この投資を実行した経緯を教えて下さい。
「本件は昭和電工マテリアルズのプリント配線板事業を
カーブアウトした案件です。昭和電工マテリアルズは、昭和電工による日立化成の連結子会社化で誕生した会社ですが、買収後に事業の選択と集中が進む中でプリント配線板事業は非コア事業に位置付けられ、リソースがあまりかけられていない状態でした。
そのため、経営や事業を担う人材が不足し、製造設備の整備や更新が遅れていたため、生産能力が落ちていました。また、大規模な生産工場をもつシンガポール拠点では、現地法人の人材マネジメントや経営面のガバナンスにも課題を抱えていました。さらに、プリント配線板は電子機器に使われる部品なので、半導体需要の影響を受けやすく業績のボラティリティが高いという課題もありました。
一方で、この事業は大手のクライアントを顧客基盤として有していて、半導体関連事業ゆえにマーケットに伸び代がありました。非常に難易度が高い案件でしたが、リソースを投入してもらえず、本来のポテンシャルを発揮できない状態が続いたことで生まれた『マグマ』のようなものに魅力を感じて投資を決めました」
■木村雄治(きむら・ゆうじ)
東京大学教養学部卒業。米国ペンシルバニア大学ウォートン校MBA(1991年)。 2004年にポラリスを創業し、以来CEO兼投資委員長として同社を牽引。『しがらみからの脱却』に焦点を当て、数多くの事業承継案件や大企業からのカーブアウト案件を成功させつつ、ポラリスを業界屈指のPEファームに成長させた。ポラリス創業以前は、日本興業銀行でキャリアをスタートし、約16年間、同行並びにみずほ証券にてコーポレート・ファイナンスや投資銀行業務に従事。とりわけ、みずほ証券では、プライベート・エクイティ部長として、自己勘定投資による未公開株投資を推進。19年9月~21年9月一般社団法人日本プライベート・エクイティ協会会長。20年4月京都大学経営管理大学院客員教授就任。