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[【クロスボーダーM&A】ベトナム投資の基礎知識 [ベトナムマーケット概要](ワールディング)]

(2018/03/28)

ベトナムの医療業界

 谷口 正俊(株式会社ワールディング 代表取締役社長)

  先月2月26日に開かれた厚生科学審議会の結核部会で、厚生労働省は、東南アジアなどからの90日を超える長期滞在者に対し、ビザ申請時に結核入国前スクリーニングを実施する方針を決めた。これは、2016年の外国生まれの新登録結核患者数が過去最高の1338人(前年比174人増)と増加傾向にあることから、結核患者の上位6カ国(フィリピン、インドネシア、ミャンマー、ネパール、ベトナム、中国)に対し、当該国の国立病院等を日本政府が検査医療機関として指定し、検査医療機関が結核非罹患証明書又は結核治癒証明書を発行するものである。当該6カ国のうちベトナムの罹患率(1年間で新たに診断された結核患者数を人口10万人あたりの率で表したもの)は中国に次いで下から2番目と低い(中国:64、ベトナム:133)ものの、ベトナム出身の結核患者は全体の15.8%と3番目に多い(フィリピン:23.8%、中国:20.3%)。

  ベトナムの医療機関は約1万3500施設あり、うち8割をコミューンヘルスセンターと呼ばれる各市町村の保健センターが占める。残りの2割のうち公立病院が約1250施設で、民間病院は180施設ほどに留まっている。他国と比較してベトナムの医療事情として特徴的なのは、この公的セクターのシェアの高さに加え、薬剤師が診療・処方を兼ねており薬局が診療所代わりに活用されている点、都心部に患者が集中して地方病院の稼働率が低い点、病床数が多い点(1万人あたりの病床数は20床で東南アジア3番手)が挙げられる。加えて、特徴として大きいのは、ベトナムは外国人医師の営業行為が可能であることだ。フィリピン、マレーシアは、外国人医師の就労には国籍規定があり、インドネシアはインドネシア語が話せる必要があるが、ベトナムではそのような規定はなく、基本的には医師資格があれば、あらゆる医療行為が可能で、病院の兼業も問題ない。

  ベトナムには3大病院と呼ばれている公的病院がハノイ(Bach Mai Hospital、1400床、スタッフ2000人)、ホーチミン(Cho Ray Hospital、1800床、スタッフ3200人)、フエ(Hue Central Hospital、2400床、スタッフ2500人)に1カ所ずつ存在している。

  2014年から認可されるようになった公立病院の民営化や民間病院の新規参入、外資病院の新設許可も進んでいる。2015年のHanoi Transport Hospitalは、株式の過半数をT&T GROUPに譲渡し、ベトナム初の病院の民営化をおこなった。他にも、地場最大の不動産会社Vin Group傘下のVinmec International Hospitalやベトナム初の外資独資病院Hoan My Medical Corporationなどが民間病院として展開しており、富裕層をターゲットとする香港系のFV Hospitalといったところもある。ただ、外資病院の設立にあたっては最低資本金が2,000万USドルと高額であるため、外資100%の病院はまだ少ない。

  ベトナムの課題として、医療設備や医療水準で他国と見劣りするため、富裕層の海外流出が増えつつあることも挙げられる。ベトナム富裕層の近隣国へのメディカルツーリズムは年間3~4万人と見られている。国内の医療水準を上げることで、逆に他国からのインバウンド需要も高められるかどうかに注目したい。


株式会社ワールディング

株式会社ワールディング
TEL:03-5361-6455

■筆者プロフィール
谷口正俊(たにぐち まさとし)
1973年イタリア・ローマ生まれ。
早稲田大学商学部卒業後、(株)ベネッセコーポレーション入社。
同社退社後、2000年7月「教育を通じてより良い世の中へ」と、教育関連企業(株)ウィル・シードを共同創業、代表取締役副社長就任。大手企業400社の人財育成支援及び、全国の小中学校に新しいタイプの体感型教育プログラムを提供。
同社副社長を退任後、2006年6月、(株)アクティブリッジの設立に参加。
7年に亘るベトナム事業展開の後、2013年3月、(株)ワールディングを設立。
日系企業のベトナム進出支援、ベトナム人材採用・育成事業を展開中。
日本とベトナムを往復する日々を送っている。


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