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[寄稿・寄稿フォーラム]

2018年5月号 283号

(2018/04/16)

株式交付制度~会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案の検討

西村 修一(長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
1. はじめに

 本年2月14日に開催された法制審議会の会社法制部会で「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」(以下「中間試案」という。)が取りまとめられ、4月13日までの間パブリックコメントに付されている。

 中間試案に盛り込まれている改正は、株主総会や取締役等に関するガバナンス関係の規律の見直しを中心とするものであるが、その中ではやや異色の改正として目を引くのが、新たに導入が検討されている株式交付制度である。この改正が実現すれば、日本企業による株式対価のM&Aの可能性が広がることになり、M&A実務に大きな影響を与える可能性のある改正であるため、本稿ではこの株式交付制度について解説することとしたい。

 なお、本稿の内容は、筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する法律事務所の見解を示すものではない。


2. 株式を対価として他社を買収する場合の会社法上の制約

 欧米においては、買収者が買収の対価として自社の株式を用いることは一般的であるのに対して、日本企業が自社の株式を対価として他社の買収を行う事例は多くはない。欧米においては特に大規模買収の際には買収者の株式が対価として用いられることが多く、現金のみを対価とする日本企業による買収は比較的規模が小さいとの指摘もなされているところである。平成29年12月に閣議決定された「新しい政策パッケージ」の中でも、大胆な事業再編を行う際の株式対価M&Aの促進に必要な措置を講じることが謳われており、日本企業による株式対価M&Aの促進は政策上の課題として認識されている。

 現行の会社法の下でも、自社の株式を対価として他社の買収を行うための手法は存在するが、これらの手法については以下のような制約が存在する(このような会社法上の制約とは別に、税務上の制約もあるが、この点については後述する。)。

 まず、会社法上、株式を対価として他社の買収を行うための手法としては、株式交換を用いることができる。しかし、会社法上、日本の会社と外国会社の間で株式交換を行うことはできないと考えられているため、株式交換により外国会社を買収することはできず、また、株式交換は対象会社の株式の全部を取得する制度であるため、対象会社の株式の一部のみを取得する場合には用いることはできない。

 会社法上考えられるもう一つの方法としては、買収対象会社の株主から買収対象会社株式の現物出資を受け、それと引換えに買収会社が新株発行又は自己株式の処分を行うことが考えられる。もっとも、この場合には、会社法上の現物出資規制が適用され、原則として検査役の調査が必要になるが(注1)、この調査にどの程度時間がかかるのかを事前に予測するのは困難であり、取引全体のスケジュールを組む上で支障を来すことになる。また、検査役の調査が不要となる場合であっても、募集株式の発行・自己株式の処分の効力発生時において、その給付した現物出資財産(すなわち対象会社の株式)の価額が出資の価値に著しく不足する場合には、現物出資の価額の決定に関与した取締役等は、その職務執行を行うことにつき注意を怠らなかったことを証明しなければ不足額につき支払う義務を負うことになる(注2)。すなわち募集事項決定時から募集株式の発行時までの対象会社の株式価値が下落するリスクを取締役個人が負担することになるが、通常、このようなリスクを引き受けることはできないであろう。

 株式交付は、会社法上の募集手続によらずに、自社の株式を対象会社の株主に対して交付することを可能とすることにより、このような会社法上の制約を取り除くことを内容とするものである。


3. 株式交付の概要

 株式交付は、いわば「部分的な株式交換」として、会社法上の組織再編行為の一つに位置づけられており、買収者側(以下、中間試案における呼称に従い「株式交付親会社」という。)において必要となる手続は、株式交換の場合の株式交換完全親会社における手続と類似する部分が多い。他方、株式交換の場合に株式交換完全子会社が株式交換契約の当事者になるのとは異なり、株式交付の場合には、買収対象となる対象者(以下、中間試案における呼称に従い「株式交付子会社」という。)は株式交付子会社の譲渡に関する契約の直接の当事者となるわけではなく、株式交付子会社側において必要となる手続については特に定めは置かれない予定である。

 中間試案の中で示されている株式交付の主なポイントとしては以下のような点が挙げられる。

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