見極められつつあるESG投資の実質
ESGが一般化し、ESG要素の存在が機関投資家による投資の前提事項との認識が広がる中、世界のエネルギー企業は環境への負荷が大きい化石燃料関連の事業を縮小し、再生可能エネルギーシフトに向けた取り組みを進めている。
一方、ウクライナ危機によりエネルギー価格が上昇したことにより、化石燃料事業の採算が良化したことを背景に、ENEOSホールディングス、出光興産、コスモエネルギーHDなど日本の大手石油会社の業績は堅調だ。インフレの深刻化や景気後退懸念が拡大する中、利回りを希求する投資家にとってはESGが必ずしも投資パフォーマンスに直結していないことが改めて注目されており、欧米では「反ESG」やESGファンドの区分の厳格化といった動きも出てきている。こうした状況を踏まえ、本稿では、大手石油会社のM&Aによる「再エネシフト」の動向を振り返ると共に、ESGを巡る足元の動きがM&Aに与える影響について考えてみたい。
2023年1月16日、ENEOSは2021年に2000億円で子会社化した再生可能エネルギー事業者であるジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)に、両社で行っていた再生可能エネルギー事業を会社分割により集約することを公表した(図表)。
【図表】エネオスとJREの再生可能エネルギー事業統合の概要

(出所)ENEOS
具体的には、...