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[M&A戦略と法務]

2020年11月号 313号

(2020/10/15)

表明保証違反を理由とした損害賠償請求を巡る近時の判例の考察

―損害論を中心として―

山宮 慎一郎(TMI総合法律事務所 パートナー 弁護士)
1 はじめに

 株式譲渡契約や事業譲渡契約といったM&A契約において必ず規定される表明保証条項であるが、その条項の定め方等については、実際の交渉に携わる国内外のM&A専門家の経験と英知によって様々な工夫がなされ、洗練された議論と内容が確立されてきているところである。その一方で、M&Aも上場企業から中小企業まで多岐にわたるため、特に小規模M&Aでは、当事者である企業経営者やそれに助言を行う仲介者・アドバイザリーの経験が乏しく、またコスト・対応能力面で詳細なデュー・ディリジェンスや綿密な契約交渉を行うことができないため、その条項の文言が定められた趣旨を十分に吟味することなく、定型的なモデル契約書に沿った内容で条項を定めて、最終契約に至っているケースも散見される。その結果、契約締結後に当事者でも想定しなかった事態が生じたときに、改めて表明保証条項や誓約条項を見直してみると、発生した事象を直接当てはめるのが困難な場面に遭遇したり、条項が抽象的過ぎてその適否自体が当事者間で議論になったりすることもままある。とはいえ、条項の解釈・適用についての結論が曖昧なまま、当事者間の協議で妥協的解決が図られることも多いことから、これまでM&A契約の条項の解釈に関しては、裁判所にて本格的に争われた事例も乏しかった。また裁判官のM&A契約の条項の趣旨に関する理解が必ずしも十分でない場合には、典型的な民法・契約法の議論になぞらえてM&A契約の条項の解釈や、事実認定がなされ、当該M&A交渉に携わった実務家・当事者が当初意図した結果とは異なった判断が下されることもある。M&A実務家の認識と裁判所の判断の間の乖離が懸念されると、当事者としてはますます裁判による紛争解決を敬遠しがちとなり、これがM&A契約を巡る裁判例の蓄積が進まなかった一因になっていたとも思われる。もっとも、M&A取引の普及に伴い、当事者間の協議で解決できない紛争も増えてきて、ここ十数年の間にM&A契約の条項の解釈をめぐる裁判例も増えてきたところであり、とりわけ表明保証違反を理由とする損害賠償請求事件の判例は、近時法律雑誌でも積極的に取り上げられるようになってきた。そこで今回は、表明保証違反を理由とする損害賠償事件を題材として、従来の下級審判例が示してきた解釈を整理しつつ、その考えがこの数年に出された判決にどのように敷衍されているのかについて、特に損害論に焦点を絞りながら実証的な検証を試みることとしたい。

2 表明保証違反に関する損害賠償請求の判例の動き

(1)表明保証の機能・法的性質、補償条項の定め方

 おさらいとして、M&A契約の表明保証条項の機能を要約すると、一般的に(1)取引を中止したり、補償条項と相俟って金銭的な条件を修正したりして売主・買主間のリスク分担を図る機能、(2)ネガティブ情報の開示を促しデュー・ディリジェンスを補完する機能があるとされている。また

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