[M&Aトピックス]

(2022/03/31)

ベイン&カンパニーが、日本市場向けM&Aリポートを公表~「変革型」M&Aの必要性を指摘


2021年の日本のM&Aは小型化

 ベイン&カンパニーは3月29日、「『変革型』M&Aを成功に導くために」と題した日本市場向けのM&Aレポートをまとめた。

 2021年の世界のM&A市場は非常に活発で、金額ベースでは5.8兆ドルと過去20年で最大、2020年比では総額1.5倍のディール規模だった。好調だった理由として、①世界的な「カネ余り」や上場企業のマルチプル上昇を背景として、「高くても買う」流れが強まっていること(M&Aディールの平均EV/EBITDA倍率は15倍で、過去最高を記録した)、②プライベートエクイティを中心としたファイナンシャルバイヤー 、CVC /VC、SPAC 等の非伝統的な買い手の存在感が拡大したこと、の2点を挙げた。

 他方で、2021年の日本企業によるM&Aは金額ベースでは前年比でやや縮小した。事業会社を中心としたストラテジックバイヤーが、ディールサイズの小型化を理由にマイナス20%程度に縮小したことが主な要因という。

 レポートでは、トレンドとして日本企業の「祖業」の売却の動きが広がっている点についても触れている。日立製作所による日立金属のベインキャピタルへの売却、昭和電工のアポロ・グローバル・マネジメントへのアルミ事業売却など、2021年に日本企業が行った事業売却案件のうち、祖業売却の割合が10%を占めた。

「変革型」M&A成功への示唆

 ただし、ベインの調べによると、日本企業の海外M&Aの約20%は帳簿価格の減少、約10%は市場撤退または買収時より低い価格で売却するという結果に終わっているという。レポートでは、「足元でM&A全体のマルチプルが向上している中、高値づかみリスクはこれまでにないほど上がっている」と警鐘を鳴らした。

大原 崇氏

大原 崇氏

 世界的なディール価格の高止まりでM&A全般のリスクが上昇している中においても、日本企業が事業ポートフォリオ変革を目指す難易度の高い「変革型」M&Aに取り組む必要性について言及している。

 今回のレポートを取りまとめたベイン&カンパニーの大原崇パートナーは、「変革型」M&Aについては、「成果は大きいながらも高マルチプルなデジタル・グリーン関連の海外企業の買収であることが多い」と指摘する。さらに、「もとより、日本企業の海外 M&A の戦績は芳しくない。『変革型』の成功に向けては、M&A の目的・統合後のビジョンの明確化、買収先企業の事業モメンタムや文化・人材の維持、そしてM&A実行のケイパビリティを整備する――等の『基本』に立ち返ることが極めて重要だ」(大原氏)と述べた。


■ レポート本文「「変革型」M&Aを成功に導くために」

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