[【小説】経営統合の葛藤と成功戦略]
2013年5月号 223号
(2013/04/15)
山岡ファイナンスサービス社と渋沢ファイナンスコーポレーション社は、半年後に迫る経営統合に向け華々しく対外発表を実施したが、水面下では山岡FS社の急激な業績悪化が顕在化し、破談となりかねない事態が生じていた。
抜本的な構造改革が求められる山岡FS社では、統合推進事務局長の松尾明夫がリストラクチャリング施策の検討に取り組む中で、人事部長の矢敷寛矩に助けを求め、一つのアドバイスを得ていた。
人事部長への相談
取締役人事部長である矢敷寛矩との相談を終え、山岡FS社統合推進事務局長である松尾明夫は経営企画室フロアの自分のデスクに戻った。時計は22時を回ろうとしていた。
松尾は矢敷の言葉を反芻しながら、ノートを開きペンをとった。
「確かに生産性を渋沢FC社に合わせるといっても、何を所与にし、何を変数にするかによって結論は変わる。人員削減というシナリオを選択するのか、それとも人は減らさず収益向上というシナリオを選ぶのか。そのシナリオの描き方によって、発生する構造改革費用や特別損失額も大きく変わってくるだろう。また大幅な人減らしをすれば、経営統合前に我が社の企業風土が荒廃しかねない。両者の強みを活かして新たな新会社の風土を築こうとしているにも関わらず、山岡FS社を牽引するコア人材が流出してしまい、統合効果を出せないというリスクもあるだろう」
ここまで一通りメモを取りながら、そこで松尾のペンが止まった。違和感を覚えずにはいられなかったのだ。
大きな違和感
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