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[対談・座談会]

2020年8月号 310号

(2020/07/06)

[座談会]新型コロナ禍を踏まえたグローバルリスク・危機管理対応の実際とあるべき姿

【出席者(五十音順)】
池島 勝利(マーシュブローカージャパン マネージングディレクター)
佐々木 清隆(一橋大学大学院経営管理研究科 客員教授)
野尻 明裕(ボックスグローバル・ジャパン 代表取締役社長)
村崎 直子(クロールインターナショナル シニアアドバイザー、ノブリジア代表取締役)(司会)
本座談会は、M&A専門誌マール 2020年8月号 310号(2020/7/15発売予定)の特集記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。

右から加藤 雅也氏、松田 千恵子氏

左から野尻 明裕氏、佐々木 清隆氏、池島 勝利氏、村崎 直子氏

<目次>
  1. 自己紹介
  2. 危機管理に関する日本企業の課題を振り返る
    リスク管理は「フォワード・ルッキング」でなくてはならない
    計量化できないエマージングリスクが高まっている
    BCP(事業継続計画)の概念を根本から変える必要がある
    保険だけでリスクマネジメントを行うことは困難に
    コロナに関して保険で補てんできる部分はあるか
    リスクコントロールは取締役の善管注意義務とも絡んでくる
    リスクコミュニケーションは、トップがリーダーシップを持ってどう発信していくか
  3. コロナ禍を受けての今後の日本企業への影響
    今後M&Aで買い手となる場合は、リスクの観点でしっかりデューディリすべき
    リスクマネジメント戦略が大きく変わる節目に
    『保有』と『転嫁』のベストバランスが今後のリスクマネジメント戦略には必要
    欧米企業と日本企業のリスク管理に対する考え方の違い
    日本はリスク管理のプロフェッショナルが育っていない
  4. 「未曾有」「想像を超える」リスクや危機にどう備えるべきか
    トップはリスク対応について平時から訓練すべき
    日本の金融機関は次の打ち手を考えないと外資や非金融プレーヤーともっと差がつく
    集めた情報をつなぎ合わせて分析するインテリジェンスが大事
    今後の雇用を巡り、経営者の資質が問われている
――新型コロナウイルスの感染は中国から韓国、日本、そして欧米に拡大し、サイバーセキュリティ同様、新型コロナのパンデミック対応でも政府・企業の危機対応、ガバナンス力が問われるところとなりました。本座談会では、リスク管理の専門家の方々にお集まりいただき、危機管理に関する日本企業の課題を振り返っていただくとともに、コロナ禍を受けての今後の日本企業への影響、「未曾有」「想像を超える」リスクや危機にどう備えるべきかについて話し合っていただきます。なお、村崎様に司会をお願いしています。

1. 自己紹介

村崎 「まずはそれぞれ自己紹介をお願いします」

池島 勝利氏

池島 勝利(いけじま・かつとし)

保険業界歴 33年 (Marsh 8年)
1987年日系保険会社入社。国内営業を経て海外(香港)での営業を契機に2002年香港にて日系保険ブローカーの責任者として転籍。
同社の外資系保険ブローカーによる買収交渉を経て、香港法人の日系部門を立上げ。04年の中国WTO加盟を機に、同社と中国大手商社との合弁会社に移籍し、新たに日系部門を立上げ、外国人初となる中国保険監督庁認定保険ブローカー資格取得。上海を拠点に香港・中国において数多くの大手日系企業のプログラム構築。
12年帰国、マーシュブローカージャパン㈱入社。営業部門の責任者として、大手日系企業のグローバルプログラムの新規構築と運営、巨大リスクに対するリスクファイナンス等の業務を牽引。

池島 「マーシュブローカージャパンの池島と申します。当社は、Marsh, Mercer, Guy Carpenter, Oliver Wyman で形成されるMarsh& McLennanグループの一員で、ニューヨークが本社です。マーシュは、顧客に対してリスクマネジメントの導入支援を行っており、保険もリスクのソリューションの一つです。私自身は日本の保険会社に15年、現職含む外資系保険ブローカーに18年という経歴です。一貫して保険業界に身を置いていますが、本日は保険の仕組みを作ってきた保険ブローカーの立場としてお話をしたいと思っています。

 M&Aに絡む場面での私ども外資系保険ブローカーにお声がけ頂く場面が多いのはクロスボーダー案件です。以前は海外進出=工場進出でしたが、今は海外で新しく市場を買う、技術を買うということで、クロージング前のDDからクロージング後のPMIが特に重要視されてきています。PMIとして、買収する先の企業の保険プログラムとの統合効果を最大化するという役割はもちろんですが、カーブアウト案件の場合で、売り手側が特殊なリスクと保険を手配している場合、買い手側としてDAY1までに保険手配する必要があること、手配が困難で高額となる場合もあるので、あらかじめ買収価格に織り込んでおく必要があります。とはいえ、リスクと保険の部分についてのDDはまだ後回しになっているような印象を受けています。

 私自身、33年間ずっと営業最前線でお客様と近いところにいますので、お客様がどう考えているのか、お客様がどう変わってきたかといったところは、本日の対談でも皆さんと共有していければと思います」

佐々木 清隆氏

佐々木 清隆(ささき・きよたか)

一橋大学大学院経営管理研究科客員教授兼グローバル金融規制研究フォーラム代表 1983年東京大学法学部卒、大蔵省(現財務省)入省。 金融庁証券取引等監視委員会事務局長、公認会計士・監査審査会事務局長、総括審議官を経て2019年7月に総合政策局長を最後に金融庁を退官するまでの間、20年以上にわたり金融行政に従事。特に、銀行検査監督、証券市場監視、監査法人検査、コーポレートガバナンス、仮想通貨(暗号資産)を含むデジタライゼーションへの対応等国内外で多岐にわたる専門的な経験を積む。またOECD,IMFに延べ3回、10年の勤務のほか金融監督当局の国際的な集まりであるFSB(Financial Stability Board), バーゼル銀行監督委員会等でも活動するなど国際経験も豊富。

佐々木 「私は、今は一橋大学大学院ビジネススクールの客員教授で、『グローバル金融規制と新しいリスクへの対応』というテーマで授業をしています。旧大蔵省(現財務省)に1983年に入り昨年7月に退官するまでほとんど金融分野を歩いてきました。金融庁、金融監督庁を含めて金融検査の分野が10年、証券市場の監視をする証券取引等監視委員会が7年、それから監査法人の検査を行う公認会計士・監査審査会というところに4年。あとはOECDに6年、IMFに3年と、ほぼ10年は海外でした。M&Aについては、特に証券市場を監視している中で、例えばインサイダー情報の管理の問題とか、あるいはM&Aそのものですと、金融機関や保険会社の国内統合、外国企業の対日M&A(OUT-IN)、特にメガバンクや大手保険会社の海外M&A(IN-OUT)案件を見るケースはありました。

 特にリスク管理の中でも、今日のテーマの『危機管理』ということになりますと、金融システム、金融機関に絡む危機管理は今までに山ほどありました。典型的にはシステム障害であるとか、自然災害に伴うBCP(事業継続計画)であるとか。金融は社会の重要なインフラですから、そのビジネスを継続することがますます重要になっているわけです。一方で、デジタライゼーションが進んで、サイバー攻撃などのリスクが高くなっています。それに併せてBCPも高度化しなくてはならないという問題があり、今回のコロナについてはさらにフェーズが変わったという気がしています」

野尻 明裕氏

野尻 明裕(のじり・あきひろ)

1991年大蔵省(現財務省)入省し、主計局、国際金融局、理財局、金融庁監督局等を経て2003年退官。同年株式会社ニッシンに入社し、専務取締役企画管理本部長等を歴任。2009年フライシュマンヒラード・ジャパン株式会社に入社。2010年その傘下にボックスグローバル・ジャパン株式会社を設立し代表取締役社長に就任し、現在に至る。東京大学法学部卒、米国ハーバード・ロースクール修了。米国ニューヨーク州弁護士資格取得。

野尻 「ボックスグローバルの代表をしております野尻でございます。ボックス社はコミュニケーション・コンサルティングというのが広義のカテゴリーですが、本日のテーマである『危機管理』という観点では、危機管理コミュニケーションを一つの専門分野とし、例えば企業が危機に陥ってしまった、あるいは危機になりかけているときに、その危機を乗り越えていくためのお手伝いをさせて頂いております。事業の性格上、小さいものも含めて危機が頻発しやすい会社などには、平時から危機に向けた準備、例えば記者会見模擬トレーニングなどの事前準備を提供しております。

 またM&Aという観点では、われわれは『フィナンシャル・コミュニケーション』という言い方をするのですが、クロスボーダーでM&Aをするときなどに対外発信・説明のお手伝いをさせて頂いております。例えば、PEファンドが国内企業の買い手となる場合に、メディア的に『ハゲタカ』と言われたりするかも知れませんし、あるいは従業員が反発したり、当局が慎重になるなどいろいろと課題が出てくることがありますので、これらステークホルダーとのコミュニケーションについてアドバイスをしています。これはいわゆるOUT-INに限らず、IN-OUTのときにもわれわれのグローバルネットワークを活用してお手伝いをしています。私自身は元々は佐々木さんの大後輩でして、91年に旧大蔵省(現財務省)に入省し、12年間役人をやらせていただき、その後民間の上場金融会社で5年間CFOを務め、現在のボックス社では、親会社のフライシュマン・ヒラードの時代を含めて11年間というのがビジネス経験でございます」

村崎 直子氏

村崎 直子(むらさき・なおこ)

株式会社ノブリジア代表取締役
大学卒業後、警察庁に入り、静岡県警捜査第二課長、兵庫県警外事課長を歴任。2008年ベイン・アンド・カンパニー・ジャパンを経て、10年クロール日本支社に入社。M&A時のデュー・ディリジェンス、企業の不正調査やリスクマネジメント業務を数多く手掛ける。15年同日本支社代表を経て、18年9月より現職。京都大学法学部卒業、ハーバード大学ジョン・F・ケネディ行政大学院修士課程修了。

村崎 「司会を務めさせていただきます村崎です。大学を卒業後、警察庁に入り、静岡県警捜査第二課長、兵庫県警外事課長を務めました。この間、外務省出向時には拉致問題を始めとする北朝鮮外交に従事。その後、08年ベイン・アンド・カンパニー・ジャパンを経て10年にクロール日本支社に入社し、15年から日本代表、19年からシニアアドバイザーを務めています」


2. 危機管理に関する日本企業の課題を振り返る

リスク管理は「フォワード・ルッキング」でなくてはならない

村崎 「佐々木さんは国とは一線を引かれた形にはなっていますが、今回のコロナの件をどういう目でご覧になっていますか」

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