山路亜紀 SHIFT 執行役員 兼 広報IR部 部長(左)と小島秀毅 同 グループ経営推進部 部長、SHIFTグロース・キャピタル 取締役
SHIFTグループは2005年9月、丹下大氏により設立された。ソフトウェアの「品質保証」を起点に、顧客の“売れるサービス作り”全体をサポートしている。2014年東京証券取引所マザーズ市場に上場、その後、2019年に第一部への上場市場変更を行い、2022年4月にはプライム市場へ移行した。
2023年8月期の売上高は前期比35.7%増の880億4300万円、営業利益は同67.4%増の115億6900万円、経常利益は同59%増の120億400万円で15期連続増収、7期連続で過去最高益を更新。2024年8月期は売上高で前期比30~39%増の1140~1220億円、純利益は17~60%増の73~100億円を見込むという成長企業だ。
SHIFTの成長戦略の中で重要な柱の1つがM&A。
これまで31件のM&A(資本業務提携を除く)を行い、2023年には上場企業で最多となる10件のM&A案件をリリース。時価総額は上場時からおよそ185倍の6300億円程(2023年12月末時点)の規模まで拡大。グループ会社も毎年平均で約130%成長を続けている。
月刊『MARR(マール)』では、2023年2月号*でSHIFTのM&A成長戦略を特別インタビューとしてM&A/PMIのプロセスの“型化”という同社独自の手法を用いた圧倒的な
クロージング実績と、グループ会社の成長を両立させる戦略について聞いた。同社はその後も、海外M&A/
PMIの専門チームやEVACコンサルというSHIFT流の経営コンサル部隊を新設するなど体制強化を積極的に進めている。
そこで、その一端を担う山路亜紀 執行役員 兼 広報IR部 部長と小島秀毅 グループ経営推進部 部長、株式会社SHIFTグロース・キャピタル 取締役にSHIFTのM&A/PMI戦略とそれを支えるIR戦術について聞いた。
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https://www.marr.jp/menu/ma_strategy/ma_casestudy/entry/41209 
- <目次>
- 2023年、上場企業で最多の10件のM&A案件をリリース
- M&Aの推進体制を加速
- KPIを変えてエグゼキューションの質を向上
- M&AプロセスとIRチームの関与
- プレスリリースのポイント
- IR戦術
- SHIFTの新たなM&A戦略
- 新たな2つの取り組み――「デュアル・トラック・プロセス」と海外事業推進室の立ち上げ
- EVACコンサル
- 伴走型経営サポートを行う専門部隊EVAC
- M&AとEVACの連携
- IT業界の構造改革、業界再編をより加速させていく
Ⅰ. 2023年、上場企業で最多の10件のM&A案件をリリース
M&Aの推進体制を加速
―― 2023年は年間10件のM&Aをリリースされ、日本の上場企業、約4000社(2023年12月末時点)の中で最もM&Aを行った会社となりました。
小島 秀毅(こじま・ひでたか)
2003年 東京外国語大学外国語学部卒業。2009年 一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程(MBA)修了。2019年 ハーバード・ビジネス・スクールPLD修了(PLDA)。大和証券、GCA(現・フーリハン・ローキー)を経て、2011年に三菱商事にてライフサイエンス本部(現・食品化学本部)立ち上げと合わせて同社に入社。食品化学事業において国内外のM&A/PMIを推進し、グループのコア事業に育てる。また、米国企業買収に伴い現地本社でもCEO補佐として北米のM&A/PMI戦略の立案と実行に携わる。2020年からSHIFTにてM&A/PMIを一貫して行える体制を組成し責任者を務める。2022年3月にSHIFTグロース・キャピタルを設立、取締役として参画しM&Aをリード。米国公認会計士。日本CFO協会グローバルCFO。<著書>『クロスボーダーM&Aの契約実務』(共著、中央経済社/2021年3月出版)
小島 「M&A/PMIチームを立ち上げて4年目に入りましたが、これだけの数のM&Aを毎年コンスタントに実行し、そのうえグループ会社も毎年平均で売上高を約130%成長させることができる体制になってきたことは素直に嬉しいです。私がSHIFTに入社した頃はメンバーもいなかったので、一人で何もかもやらなければいけませんでしたが、今は同じビジョンを持って一緒に突き進んでくれる仲間も増え、日々新しい取り組みに挑戦しています。最近はSHIFTのM&A/PMI戦略について国内外のさまざまなステークホルダーの方々と話をする機会も増えましたが、そのたびに『再現性が高い』と評価をいただきます。また、いろいろな会社からもSHIFTのM&AやPMIのやり方を教えて欲しいと依頼が来るようになりました」
―― 前回(2023年2月号)のインタビューでもM&Aの推進体制について詳しく話を聞かせてもらいましたが、その時から更に加速していますね。この1年間で具体的にどのような取り組みを行ってきたのでしょうか。