[対談・座談会]

2023年9月号 347号

(2023/08/04)

[座談会] 株主アクティビズムと2023年6月の株主総会の振り返り

【出席者】(五十音順)
内田 修平(森・濱田松本法律事務所 パートナー 弁護士)
加藤 貴仁(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
塚本 英巨(アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 パートナー 弁護士)
野澤 大和(西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士)

黒田 裕(長島・大野・常松法律事務所 パートナー 弁護士)(司会)
  • A,B,EXコース
※本記事は、M&A専門誌マール 2023年9月号 通巻347号(2023/8/15発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。
(左から)塚本秀臣氏、内田修平氏、黒田裕氏、加藤貴仁氏、野澤大和氏

(左から)塚本英巨氏、内田修平氏、黒田裕氏、加藤貴仁氏、野澤大和氏

<目次>
はじめに~本座談会の趣旨と目的、自己紹介
  1. 2023年6月株主総会の概況
  2. 株主アクティビズム
    • (1) 会社とアクティビストの主張の対立
    • (2) 買収提案後に委任状合戦に至った事例
    • (3) 東証のPBR1倍割れ改善の要請
    • (4) アクティビストによる株式の買増し
      • ① Creeping Acquisitionについて
      • ② 買収への対応方針・対抗措置とその有用性
      • ③ 有事導入型買収対応方針
      • ④ ウルフパック戦術~「共同協調行為認定基準」
  3. 買収における価格とその他の要素

はじめに~本座談会の趣旨と目的、自己紹介

―― 新型コロナウイルスの位置づけが5類になって初となる2023年6月の定時株主総会が終わりました。東証によるPBR1倍割れ会社への資本コスト等を意識した要請があり、機関投資家の気候変動問題への関心が高まる中で開催された総会でした。アクティビストによる会社への株主提案が過去最多になったとされており、極めて注目度が高い6月総会だったと総括できるのではないかと思います。

 そこで、アクティビスト対応や株主総会の実務経験が豊富な弁護士の先生方、そして会社法・企業買収に関連する多数の論文を発表されている加藤貴仁先生に、直近の株主総会の振り返りをしてもらいつつ、アクティビストの最新の状況、そもそも今、上場会社は資本市場から何を要請されているのか、あるいは、株主総会で取締役選解任が争われた個別事案に触れていただきつつ、何をどう今後の教訓とすべきなのか、議論していただければと考えました。

 この座談会が、資本市場との向き合い方を日々模索されている上場会社の経営陣やM&A担当者の方々にとって有益な内容になればと考えています。

黒田 「それでは、今日は2023年6月総会の振り返りと株主アクティビィズムというテーマで議論をしたいと思います。本日司会を担当させていただく弁護士の黒田です。まずは、先生方、自己紹介をお願いします」

加藤 「東京大学の加藤です。専門は会社法です。株主総会は最近変化が激しい分野で、私もなかなか実務の動きについていけてはいないのですが、本日は実務経験が豊富な先生方のお話をお聞きして勉強したいと思っています」

内田 「森・濱田松本法律事務所の内田です。M&Aやコーポレート・ガバナンスを中心に業務に携わっています。本日のテーマであるアクティビスト対応や株主総会を担当することも多いのですが、ルールが変更されたり、重要な判例が出たり、動きの激しい分野ですので、興味を持って勉強しています」

塚本 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業の塚本です。私もアクティビスト対応を含め株主総会やM&Aといった会社法周りを広く扱っています。今年の6月総会だけをとっても話題に事欠かないトピックがありました。キャッチアップが大変なテーマでもあります」

野澤 「西村あさひ法律事務所の野澤です。アクティビスト対応を含む株主総会指導やM&A等のコーポレート全般を主な業務分野にしています。一昔前であれば、株主総会は型通りのルーティーンでも良かったのですが、近時は、アクティビストの活動が活発になったり、新型コロナウイルス感染症の拡大で従来の株主総会の実務が通用しなかったりと、型通りのやり方で進めていくのが段々と難しくなってきていると感じています。本日は、理論面及び実務面でご知見・ご経験が豊富な諸先生方のお話をお聞きしながら勉強させていただければと思います」

黒田 「最後に、改めまして本日司会を担当する長島・大野・常松法律事務所の黒田です。私もM&Aとアクティビスト対応、そして株主総会周りの案件を多数取り扱っています。関係者によるコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の理解も進み、株主総会での質問だけでなく、株主提案を通じて実質的に争われるケースも散見されるようになって参りました。先生方がおっしゃったように、裁判例、ガイドラインを含む制度面の動きも大きく、非常に関心をもって取り組んでいます」

1.株主総会の概況

(1) コロナ後の総会の感想 電子提供措置、各社の対応状況と工夫

黒田 「それでは、まずは株主総会の概況について採り上げたいと思います。2023年は新型コロナの感染症法上の位置づけが5類になってから初の株主総会ということで、会社が株主総会の資料をウェブサイト等インターネット上で提供する電子提供措置が始まりましたが、感想はいかがでしたか」

塚本氏

塚本 英巨(つかもと・ひでお)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 パートナー弁護士
2004年弁護士登録、2016年~公益社団法人日本監査役協会「ケース・スタディ委員会」専門委員、2017年~2022年経済産業省「コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会(第2期・第3期)」委員、2019年~2021年経済産業省「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」委員。2010年~2013年に法務省民事局へ出向し、平成26年改正会社法の企画・立案を担当。最近の著書・論文として、『株主総会ハンドブック〔第5版〕』(商事法務、2023年)(共同執筆)、「多様性のある取締役会の実効性確保の在り方」(資料版/商事法務458号(2022年))など、多数。

塚本 「コロナが5類指定になったことを受け、特に6月の株主総会では招集通知での来場自粛の呼びかけがなくなり、入場制限もかなり緩和されました。来場する株主が増え、質問も増えた印象です。電子提供制度は、上場会社では3月総会から適用が開始されました。株主に書面で送るものをアクセス通知(いわゆる狭義の招集通知に相当するもの)のみとする会社がどの程度現れるか注視していました。

 全体的な状況としては、アクセス通知のみを送付するケースは非常に少数だったようです。電子提供措置を行うことに加え、全株主に対して株主総会参考書類や事業報告、(連結)計算書類を書面で送付するフルセット・デリバリーが主流であり、紙媒体時代と同じ方法が多く採られていました。今年は適用初年度であり、慎重に対応する方針ということであったのかもしれません。株主の書面交付請求についても、昨年から案内されていたとはいえ、株主がきちんと制度を理解したうえで、書面交付請求をする、しないを判断したわけではない可能性もあります。

 株主への送付物については、アクセス通知のみやフルセット・デリバリーのほか、アクセス通知に株主総会参考書類や事業報告等のサマリー版を添付するなど、様々なバリエーションが考えられます。2024年以降、フルセット・デリバリーよりも少ない書面を送るパターンが増えるのかどうかに注目しています」

内田 「来場者は増えたと思いますが、コロナ前の水準まで戻ったとまでは感じられませんでした。特に来場者へのお土産等がない会社では、予想以上に回復が進まなかった印象もあります。コロナ前の状況に完全に戻ることはないのではないかとも感じています。

 電子提供措置に関しては、各社の総会担当者や証券代行業界の方々など実務の最前線では相当なご苦労があったと思いますが、全般的にスムーズに対応されており、トラブル対応などを含め、弁護士の業務として難しい論点が続出したというわけでもなかったように感じます。ただ、書類のレビューを行う際に、依頼者から送られてきた書類が株主に配布されるものなのか、ウェブページに掲載されるものなのか、その位置づけが一見するだけではわかりにくいこともあるなど、初年度特有の苦労もありました。また、議場で発言する株主がどのような書類を手元に持ち、前提として発言しているのかが分かりづらい場面もありました。

 このような実務対応上の悩みもないわけではありませんでしたが、全体的には、関係者の皆様の努力のおかげで混乱なく進行し、大きなトラブルもなく終了したという印象です」

加藤 「紙という媒体から解放されれば、各社が情報提供の仕方を工夫することが期待されるというのが電子提供措置の立法趣旨の1つだったわけですが、そういった工夫は何か見られましたか」

野澤氏

野澤 大和(のざわ・やまと)

西村あさひ法律事務所、弁護士(パートナー)。2004年東京大学法学部卒業、06年東京大学法科大学院修了、07年弁護士登録、12年~13年東京大学法科大学非常勤講師、14年Northwestern University School of Law (LL.M.)修了、14年~15年Sidley Austin LLP勤務、15年米NY州弁護士登録、15年~17年法務省民事局(会社法担当)出向。主な業務分野は、国内外のM&A、コーポレートガバナンス、その他一般企業法務、商事紛争一般。
主な著書(共著を含む)として、『デジタル株主総会の法的論点と実務』(商事法務)、『新しい持株会設立・運営の実務〔第2版〕』(商事法務)、『実務問答会社法』(商事法務)、『令和元年会社法改正と実務対応』(商事法務)、『M&A法大全(上)(下)〔全訂版〕』(商事法務)など。

野澤 「多くの会社においては、適用初年度ということもあったためか、基本的に情報提供の仕方は電子提供制度の適用前とそれほど変わっていないという印象でした。先進的な会社では、決算説明資料や動画等の電子提供措置事項以外の内容に関するURLや二次元コードをアクセス通知に掲載するなどの取り組みが行われていましたが、少数に留まっていたと思います。適用初年度であるので、電子提供制度の下での情報提供のあり方について横並びで様子を見ていた会社が大多数だったと思いますが、ウェブを活用した先進的な取り組みも見られましたので、次年度以降、情報提供のあり方がどのように変化していくかについては引き続き関心を持って注視していきたいと思います」

内田 「アクセス通知に加えて送付する株主総会参考書類等をサマリー版にとどめる会社は、今年の総会でも珍しくなかった印象です。初年度ということで慎重にスタートした印象はありますが、実務対応の事例が蓄積されてくる来年以降は、もう少し動きがあるのではないかと予想しています。来年はもうフルセット・デリバリーをしません、といった趣旨を招集通知に明記する事例もありました」

加藤 「あと1点、最近トヨタ自動車や任天堂など著名な上場会社が株式分割をし、個人株主の数が相当増えた可能性がありますが、その影響はいかがでしょうか。投資単位を引き下げることで新しい投資家が議決権を行使できる株主になったときにどういう変化が生じるのか、あるいは生じないのかということに興味を持っています」

塚本 「フルセット・デリバリーをするなど、アクセス通知以外にも書面を送る会社が多かった背景の1つに、個人株主の議決権行使比率に悪影響を与えたくないという配慮があるとみられます。アクセス通知だけでは議案の内容すら分からないため、個人株主による議決権行使を促進するためには株主総会参考書類等もやはり書面で送る必要があると考えられたわけです。個人株主が増えた場合、そういった配慮もあって、引き続きフルセット・デリバリーとなるのか、それとも電子提供措置の原則に従いつつ、別途、議決権行使を促す施策を取るのか、それぞれの会社が検討すべきこととなります」

黒田 「皆さんご指摘の通りフルセット・デリバリーをされている会社が多かったのですが、私が実際に担当した会社の中でも送付する書面は簡単な案内を付記したアクセス通知と議決権行使書面だけで対応する会社も何社かあり、実際にやってみたら全く混乱はございませんでした。もちろん、会社の総会担当者や証券代行機関の方々の緻密な準備によるところも大きいと思いますが、株主は上場株式を取引している投資家であり、適時開示などはウェブベースが基本なので、電子提供制度でしばしば議論されたデジタルデバイドの問題は結論としてほとんど影響がなかったということではないかとも思います。来年にはもう少し、アクセス通知が増えてくるのではないかと感じています」

内田 「ハガキのような1枚もののアクセス通知だけで済ませる観点からは、議決権行使書面を電子提供するか、という点のハードルが実務上は相応に高く、議決権行使書面は紙ベースで送付されることが通常と理解していますが、将来的には、議決権行使書面も電子提供することを検討する会社も出てくるかもしれません」

野澤 「議決権行使書面について電子提供措置の対象とした場合には、個人株主の議決権行使比率への影響も気になりますが、議決権行使書面を持参した株主については特段の事情がない限り株主総会会場への入場を認めている従来の株主総会実務にも影響があり、議決権行使書面に代わる株主本人確認のための書類をどうするかも考える必要がありそうです」

(2) 経営トップへの反対票

黒田氏

黒田 裕(くろだ・ゆたか)

長島・大野・常松法律事務所パートナー弁護士
東京大学法学部卒業。Northwestern University School of Law(LL.M.)卒業。法務省へ出向(民事局にて会社法改正の立案を担当)。
主な著書・論文として、「ESG投資、インパクト投資、サステナビリティ経営と善管注意義務」(本誌、2023年)、『実務問答会社法』(商事法務、2022年)、『実務解説 改正会社法』(弘文堂、2021年)、『論究会社法―会社判例の理論と実務』(有斐閣、2020年)、「株式交付を用いた株対価公開買付け」(商事法務、2020年)など多数。

黒田 「株主総会で経営トップへの反対票が昨年より増えたことが話題になりました。実名ベースになってしまいますが、報道でも出ていたところですので、採り上げますと、キヤノンの御手洗冨士夫代表取締役会長兼社長CEOへの賛成比率が50.59%となり、衝撃をもって報じられたほか、ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)が大林組、京セラの社長選任に反対したことも話題になり、経営トップの再任に関する賛成比率が下がった会社が散見されています。議決権行使助言会社や国内機関投資家もそれぞれの基準を持っており、例えば政策保有株の比率が高すぎる、取締役会の構成が基準に満たない、こういった形式的な理由で反対しているといった報道も多くありました。この辺については、会社として今後どう考え、どう対応していくべきでしょうか」

野澤 「女性取締役の選任については、ISS等の議決権行使助言会社が、女性取締役が不在の場合には経営トップの取締役選任議案に反対票を投じることを推奨するという方針を示しており、海外の機関投資家はもちろんですが、国内の機関投資家においても取締役会における女性の人数又は比率を議決権行使基準として採用する例が増加傾向にあると思います。現状、取締役会における女性の人数又は比率に関する機関投資家の議決権行使基準はプライム上場会社に限る等適用範囲を限定しているものもありますが、ダイバーシティに関する昨今の議論の流れに鑑みますと、将来的には女性取締役の比率に係る基準を引き上げたり、基準の適用範囲が拡大していく可能性は高いと予想されます。上場会社としては、そのような流れを踏まえ、女性取締役の人数及び比率を含めて取締役会の最適な構成は何かについて常に考えて、先を見据えながら今後対応していかなければいけないと思います」

内田氏

内田 修平(うちだ・しゅうへい)

森・濱田松本法律事務所パートナー(日本及びニューヨーク州弁護士)
東京大学大学院法学政治学研究科客員准教授
東京大学法学部卒業。コロンビア大学ロースクール(LL.M.)卒業。法務省へ出向(民事局にて会社法改正の立案を担当)。
主な著書・論文として、『M&A法大系 第2版』(有斐閣、2022年)、『実務問答会社法』(商事法務、2022年)、『会社・株主間契約の理論と実務』(有斐閣、2021年)、『論究会社法--会社判例の理論と実務』(有斐閣、2020年)、『「公正なM&Aの在り方に関する指針」の解説』(商事法務、2020年)、『M&A契約-モデル条項と解説』(商事法務、2018年)、『実務解説 会社法』(商事法務、2016年)など多数。

内田 「女性取締役の有無に関する論点は特に印象的でした。女性取締役が不在の会社で経営トップの取締役選任議案の賛成率が前年比20%程度も下がったという事例もあったようです。もちろん、賛成率の変動要因は女性取締役の有無だけではなく、何が原因だったのかは個別に分析する必要がありますが、議決権行使助言会社の方針や機関投資家の議決権行使基準を背景として、女性取締役の有無が経営トップの取締役選任議案の賛成率に大きく影響しうることは実務の共通認識になっていると思います。

 女性取締役に関しては、2018年6月改訂のCGコードの原則4-11において、取締役会の多様性の要素として『ジェンダー』を含むことが明記されました。その解釈として、『女性取締役が不在であっても原則4-11をコンプライする余地はある』との議論もあり、実務上はそのような解釈に依拠した対応もみられたところですが、直近の実務では、そのような解釈を正面から打ち出すことには躊躇を覚える状況となってきています。

 このような動きを目の当たりにして改めて感じているのは、議決権行使助言会社の方針や機関投資家の議決権行使基準が上場会社のコーポレート・ガバナンスの在り方に与える影響が非常に大きく、効果が現れるのも早いということです。例えば、独立社外取締役の選任について、会社法やCGコードの改正の過程で様々な議論や取り組みが行われましたが、実際に大多数の会社が独立社外取締役を選任するようになった大きな要因の1つは、議決権行使助言会社の方針だったのではないかと思います。女性取締役の選任の増加も、同じような過程を辿っている印象です。今後のコーポレート・ガバナンスに関するルール・メイキングの在り方―ルールの効果を最も高めるにはどのような手段、又はその組み合わせが望ましいのか―を考えるにあたっても、大変示唆に富むポイントではないかと思っています」

加藤氏

加藤 貴仁(かとう・たかひと)

東京大学大学院法学政治学研究科教授
東京大学大学院法学政治学研究科助手、神戸大学大学院法学研究科助教授、同准教授、東京大学大学院法学政治学研究科准教授を経て2017年より現職
法制審議会担保法制部会(法務省)幹事、デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会(金融庁)メンバー、従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会(東京証券取引所)メンバー
主な研究業績として、『株主間の議決権配分 – 一株一議決権原則の機能と限界 – 』(商事法務、2007年)、「高値取得損害/取得自体損害二分論の行方-判例法理における有価証券報告書等の虚偽記載等と投資者が被った損害の相当因果関係の判断枠組みの検討」落合誠一先生古稀記念論文集『商事法の新しい礎石』(有斐閣、2014年7月)817-855頁、『コーポレートガバナンス改革と上場会社法制のグランドデザイン』(商事法務、2022年11月)(神田秀樹氏らとの共著)

加藤 「ISSの地域担当者に話を聞く機会がありました。女性取締役に関する議決権行使を助言方針に入れることについては、日本に対しては相当慎重な対応が取られており、他国に比べれば少し時間の猶予を与えることが望ましい、という認識であったようです。日本に対しては、1年間の猶予期間が設けられたと理解しています。

 ISSの議決権行使助言方針の策定については、日本の事情、特にESG(環境、社会、ガバナンス)やサステナビリティについては日本社会の固有の状況等を踏まえて、このような議決権行使の助言方針が定められているようです」

塚本 「女性取締役の選任については、今後、議決権行使基準において、複数名や高い割合が求められるのが一般的となる可能性もありますので、CGコードの要請を満たすだけではなく、中長期的な展望に基づいて会社は対応していかなければならないと思います。今年の株主総会の事例・結果から考えると、先を見越した早めの対応が重要であると考えられます」

黒田 「外国人投資家よりも国内機関投資家のほうが多ければ、自社の方針が総会を通るだろう、という甘えが通用しなくなってきています。国内機関投資家もそれぞれ基準を持っていますので、その基準を踏まえて反対すべきと判断する提案には躊躇なく反対票を入れるということが、今回の株主総会で明確になってきたと思います。株主・投資家の目線で考えたときに、懸念があることが判明しているのであれば、会社側としては対応が必要になってくると思いますし、場当たり的な対応にならないように中長期的な目線で改善を目指すと共に、機関投資家とのエンゲージメントに際しても積極的に説明をする等の対応を進めていくべきだと感じています」

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