本インタビューは、M&A専門誌マール 2020年9月号 通巻311号(2020/8/17発売予定)の特集記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。
コロナ禍で大胆なビジネスモデルの転換を迫られる
―― 新型コロナのパンデミックの世界経済への影響について、経済協力開発機構(OECD)は、感染が再び拡大した場合、2020年の世界の実質経済成長率はマイナス7.6%に落ち込むとの予測を公表しました。また、国際通貨基金(IMF)によると、日本の20年の成長率はマイナス5.8%と予測され、リーマン・ショック後の09年(同マイナス5.4%)を超える景気悪化となりそうです。
カーライル・ジャパンは先ごろ、これまでの最高となる2580億円の4号ファンドを組成されました。この4号ファンドの投資戦略については、後ほど詳しくうかがうとして、新型コロナ禍で、日本企業もこれまでの成長戦略からパラダイムシフトせざるを得なくなっています。日本企業の経営環境について、どのような変化が起こると見ておられるかという点から聞かせてください。
「おそらく、今までの経済ショックとか、リセッション(景気後退)とは質が違って、今回は大きく2つの特徴があると考えています。
1つは、それぞれの事業市場における大きな変化です。例えば、今まで100あった事業規模が、今後は70とか80に縮小を余儀なくされることが予想されます。コロナ禍の中で、エコノミストはコロナ終息後の回復の軌跡について、迅速な回復を意味するV字シナリオや、当面は停滞が続くU字シナリオ、回復に時間がかかるL字シナリオなど、さまざまな予想を打ち出しています。しかし、人と人とのインタラクション(相互作用)が制限される中で元の100に戻ることはあり得ないということを大前提に考えた方が現実的です。
政府による事業の支援にも限界がある中で、結局マーケットが7割、8割になった状況の中でどのようなビジネスを展開していくかが大きな課題になります。そう考えると、既存の事業の単純な延長ではなく、新しい事業戦略を打ち出していく必要があるわけで、それに伴って業界再編も起こってくると考えています。
2つ目は、それに関連して既存のビジネスモデルをどのようにトランスフォーム(変換)していくのかが問われてくるということです。トランスフォームできるビジネスとできないビジネスとがあると思いますが、できないビジネスは、今申し上げたように、事業再編も考えなくてはなりませんし、トランスフォームできるビジネスについてもデジタル化への対応など大胆なビジネスモデルの転換が必要になると思います」
日本企業の経営戦略見直しのポイント
―― 経営のパラダイムシフトは必要だということだと思いますが、コロナ禍による経営環境の変化に対応した日本企業の経営戦略の見直しのポイントについてはどのようにお考えですか。