インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、機関投資家に対して、独自の議決権行使基準(ポリシー)に基づいた賛否の推奨を提供する「
議決権行使助言会社」としての側面がよく知られているが、そのほかにも、株主総会議案の分析や議決権行使の事務作業に関する実務的なサポートなど、機関投資家が世界各国で効率的に議決権を行使するのに必要となるさまざまなサービスを提供している。機関投資家との対話を継続的に行っていることから、投資家にとって納得感のある最大公約数的な意見を把握しやすい立場にあるといえよう。今回、ISSにて日本代表を務める石田猛行氏に、議決権行使助言会社から見た日本市場の現状について聞いた。
日本企業のガバナンス改革に対する評価 ―― ISSでは多くの機関投資家と継続的な対話を行っているそうですが、日本市場に対する海外の機関投資家の見方はどのようなものでしょうか。
「日本市場は、株主提案の数が過去最多レベルに達するなどアクティビズムが盛んになっていることに加え、円安基調ということもあって、海外の投資家からかなり注目されていると感じます。10年前であれば、
アクティビストたちが何をやったところで日本市場は変わらないと思われていましたが、今は違います。企業間の株式の持ち合いが減少していますし、円安によって株式も買いやすくなっています。また、上場会社の
PBR(株価純資産倍率)は上昇しつつあるとしても、全体的にはまだ割安な株価の会社がたくさんあると見られています。今後も日本市場においてアクティビズムが沈静化することは想定しにくく、引き続き、海外投資家の関心を集めていくと思います」
―― 日本企業は、2014年の伊藤レポートの公表以降、さまざまなガバナンス改革に取り組んできました。社外取締役は大幅に増加していますし、取締役会の実効性評価も行われるようになっています。形式的な部分はかなり整いつつあるようにも思われますが、ガバナンス改革の現状をどのように評価していますか。
■石田 猛行(いしだ・たけゆき)
ジョンズホプキンズ大学大学院にて、国際関係論修士号を取得。1999年からワシントンDCのInvestor Responsibility Research Center(IRRC)に勤務し、主に日本企業の株主総会の議案分析やコーポレート・ガバナンスの調査を担当。2005年のISSによるIRRCの買収に伴い、同年12月からISS Japanに勤務。2008年11月より日本企業の株主総会分析を統括。金融庁「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」メンバーや経済産業省「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会メンバー」を務める。