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(2023/07/18)

LBOファイナンスの貸出金利は上昇、課題となる投資家層の拡大

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ポイント
〇銀行のLBOファイナンスの融資残高は近年、大きく伸びている一方、2022年以降、ファンド既存投資先の倒産が増加傾向に。
〇LBOファイナンスの貸出金利は趨勢的に上昇。300bp(3%)超のローンも珍しくなくなっている。
〇資金の出し手は3メガに集中。LBOファイナンスの担い手拡大のための創意工夫や、地銀等のLBOファイナンスへの取り組み強化が2023年度後半に向けて広がる可能性。
ファンド投資先の破綻事例が増加傾向

 近年、貸出残高が増え、市場が急拡大しているLBO(レバレッジド・バイアウト)ファイナンス市場。足元では、地銀や生命保険会社の新規参入もみられ、担い手が広がりつつある一方、3メガバンクや大手行では、リスク管理態勢等の見直しが進められている。

 背景には市場環境の変化がある。信用調査会社の帝国データバンクの調べによれば、ファンド投資先の倒産が徐々に増えている。2022年6月にマレリが民事再生法を申請し、その後、2023年に入り、ダイナミクス、アッシュ・ペー・フランス、JOLED、ユニゾホールディングス、FCNTと、大口先も含め、ファンド投資先の破綻が相次いだ(図表)。

 これらの企業の破綻要因については、買収時の価格が高くハイレバレッジだったケースのほか、「急激に進んだインフレによる仕入れコスト増を、適切に価格転嫁できなかったケースがほとんど」(M&Aファイナンス業務の担当者)。帝国データバンク情報統括部情報取材課長の内藤修氏は、「2023年後半にかけて物価高を背景とする企業倒産は増えると予測しており、ファンド投資先の破綻事案の発生可能性を注意深く見ている。特に、ファンドの長期保有は投資が計画通り進んでいない可能性があるため、(投資ファンドが)投資実行から3年ないし5年以上が経過していないか、なぜ長期保有しているのかを慎重に分析している」と話す。

 ある大手行のLBOファイナンスの担当幹部は今後の見通しについて、「既存貸出先のレバレッジ・レシオ(借入がキャッシュ創出力を示すEBITDAに対し何倍かを示す指標)が高く、当初期待したキャッシュフローが得られていない投資先があれば、今後も一定の貸倒は生じるのは仕方がなく、その前提で融資審査や期中管理のあり方を見直している」といい、先行きは決して楽観できない状況のようだ。

近年の「主なファンド投資先」の倒産
倒産年月社名業種負債
(百万円)
態様所在地投資していたファンド等
2020年1月大沼百貨店経営3,000破産山形県マイルストーン
ターンアラウンドマネジメント
2020年9月アカクラ靴小売216破産東京都CITIC Capital
Partners Japan Limited
2021年1月大興製紙製紙業14,008会社更生法静岡県ポラリス・キャピタル・グループ
2021年2月夕張リゾートリゾート施設運営810破産北海道Great Trendo(Hk) Limited
2022年6月マレリホールディングス持ち株会社
(自動車部品製造)
1,185,626民事再生法埼玉県米KKR
2023年2月ダイナミクスお好み焼き・鉄板焼き店10,678破産東京都ユニゾン・キャピタル
2023年2月アッシュ・ペー・フランス海外雑貨小売2,900会社更生法東京都ブレイン・アンド・キャピタル・
インベストメンツ
2023年3月JOLED有機ELディスプレイ製造33,741民事再生法東京都INCJ
2023年4月ユニゾホールディングス持ち株会社
(不動産・ホテル事業)
126,198民事再生法東京都ローンスターグループ
→EBO(従業員による買収)
2023年5月FCNTスマートフォン開発87,000民事再生法神奈川県ポラリス・キャピタル・グループ

(注)倒産前にファンドがすでに売却している案件も一部含む (出所)帝国データバンク

金融庁も「水平レビュー」を実施

 こうしたなか、金融庁も銀行等が取り組むLBO市場への関心を強めている。

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