先行き見通せない外食産業
~外食急減のきっかけは「志村けん」?
新型コロナウイルスの感染拡大以降、外食産業は過去にない厳しい状況が続いている。緊急事態宣言が解除されてからは少しずつ客足が戻りつつあるものの、第2波への懸念が再び頭をもたげる中、先行きは依然見通せない状況にある。
外食産業がどれだけ厳しい状況にあるのか、家計の外食支出の推移をみながら確認しておこう。図表1は3月以降の家計の外食支出の推移を日次ベースでみたものだ。昨年の同時期と比較すると、通常時なら盛り上がるはずのゴールデンウィーク中の外食支出が緊急事態宣言によって丸ごと消滅しているのがわかる。
筆者がさらに驚いたのは外食支出が落ち始めるタイミングだ。同図をみると外食離れは3月下旬からはじまっている。筆者は不要不急の外出を手控えるよう呼びかけられた4月7日の緊急事態宣言を機に外食支出の落ち込みが始まったと思っていた。3月下旬で思い起こすのは、タレントの志村けんさんのコロナ感染と死去の報道である。感染報道のあった3月25日と外食支出のピークが重なっていることから、志村けんさんの感染報道が外食による感染リスクの怖さを強烈に印象付けることになった。
緊急事態宣言が解除された5月25日以降は外食支出が徐々に回復傾向にあるが、それでも前年の支出レベルには達していない。この先第2波が懸念される中で、外食支出が前年並みに戻るのはしばらく先になるかもしれない。
図表1 家計の外食支出の推移
~ 3つのフェーズ
先の外食支出の状況を踏まえると、コロナ禍の外食消費は主に3つのフェーズに分けられる。
① 需要蒸発フェーズ(3/25-5/24)
志村けん感染報道をきっかけとした外食需要の蒸発
② 自粛解除後の戻りフェーズ(5/25-現在)
緊急事態宣言解除後の外食への緩やかな戻り
③ 第2波感染拡大フェーズ(年内?)
第2波感染拡大で再び緊急事態宣言のような外出自粛が起こる
③は本当に起こるかどうかわからないが、足元で感染拡大傾向は続いており、4月のような自粛要請が出ることは想定しておかなくてはいけないだろう。...
■藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)
略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。