[藤原裕之の金融・経済レポート]

(2022/09/21)

拡大するノンアルコール市場 ~ノンアル市場はアルコール市場とカニバらない

藤原 裕之((同)センスクリエイト総合研究所 代表)
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コロナ禍で加速するノンアル人気

 「アルコール離れ」が指摘されて久しい。そうした中でここ数年急拡大をみせているのがノンアルコール市場だ。スーパーの売場では広いスペースにノンアルコーナーが設けられ、オンライン飲み会をするとノンアル飲料を片手に談笑する人の姿も目立つようになってきた。お酒が好きな筆者もさすがにノンアル人気を肌で感じるようになり、本稿を書くに至っている。

 コロナ禍で外飲み需要が急減した2020年のアルコール市場は前年比-5.9%落ち込む一方、ノンアルコール市場は前年比3.1%拡大した。2021年は前年比+11.1%と増加ペースが加速している(図表1)。ノンアル人気は日本に限った話ではなくグローバルな現象となっている。ノンアル人気を長期的・構造的変化と捉えた飲料メーカーはノンアルビールやカクテルテイストのノンアル商品を発表。バーなど飲食店では見た目も鮮やかなノンアルドリンク・メニューを増やしている。真似たという意味の「mock(モック)」と「cocktail(カクテル)」を組み合わせたモクテル(MOCKTAILS)を注文する人が増えているそうである。

 本稿ではノンアル人気の背景を整理するとともに、ノンアル人気がアルコール市場にどのような影響をもたらすのかについて考察したい。

図表1 アルコール市場とノンアルコール市場の推移


ノンアル人気の背景

 もはや一過性の現象とは言えないノンアル人気。それを支えるのが5つの要因である。

① 意外に多い「お酒を飲まない人」

 ノンアル人気が一過性の現象ではない何よりの証拠は「アルコールを飲まない人の多さ」にある。「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、成人の約4割(39.2%)はアルコールを「飲まない(「やめた」含む)」と答えている。「ほとんど飲まない」まで含めると半数以上(55.1%)となり、女性に限定すると7割(70.3%)に達する(図表2)。ざっくり人口換算すると「飲まない・ほとんど飲まない」人は約5700万人と推定される。ノンアルコール飲料の潜在需要は約5700万人と言われると、さすがに無視できない大きさである。

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■ 藤原 裕之(ふじわら ひろゆき)

略歴:
弘前大学人文学部経済学科卒。国際投信委託株式会社(現 三菱UFJ国際投信株式会社)、ベリング・ポイント株式会社、PwCアドバイザリー株式会社、一般社団法人日本リサーチ総合研究所を経て、2020年4月より合同会社センスクリエイト総合研究所代表。株式会社東京商工リサーチ客員研究員を兼任。専門は、リスクマネジメント、企業金融、消費分析、等。日本リアルオプション学会所属。
ブログサイト「藤原裕之のブログ アートとサイエンスの「あいだ」」を運営。

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※お問い合わせ先:hiroyuki.fujiwara@sense-create.co.jp

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